TakayukiMonji

ありふれた教室のTakayukiMonjiのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
4.0
ミステリアスな予告編を見て気になっていたこちらの試写会を狙い撃ち!今週から公開だけど、一足先に鑑賞。

とりわけ教員室と教室を舞台にした学園もので、サスペンスフルな密室ミステリーの要素も持った社会派ドラマ。原題は、”教員室”だが、邦題は”ありふれた教室”となっており、これはこれで本作の内容にうまく引っ掛けている。
あらすじはFilmarksページに記載の通りだが、相次ぐ盗難事件の犯人をめぐる流れを、ほぼ学校内の密室での出来事を組み合わせて、社会の危うさを浮き彫りにしていくのが見事だった。終始、不安を煽る音楽が流れていて、最後まで隙なく、テンポの良さに引きつけられる。

誰が犯人かという問題の真実や正解を捉えるよりも、その問題が起きた時にどのように解決していくかを、子供と保護者と同僚、上司を絡めて、コミュニケーションやコミュニティの危うさがテーマになっていて、わかりやすく丁寧に描いている。面白かった!
監督はトルコ系の移民の2世。ヨーロッパ各国でも人種の捉え方がそれぞれ違うようだけど、ドイツではこの映画のクラスの風景のように多様性のある人種の風景が”ありふれた教室”の風景のようだ。
イスラム系の女の子がヒシャブを被っているが、人種の問題は特にクローズアップされておらず、人と人、大人と子供のディスコミュニケーションの方が主題に感じた。そして、人種に寛容な風景なのに、学校内は”非寛容主義”だったりするのも皮肉な感じ。

監督が影響を受けた監督として、ガス・ヴァン・サント、スティーブン・ソダバーグ、クリスティアン・ペッツォルト、ヌリ・ビルゲ・ジェイランが挙げられていた。なるほどという感じ。




以下、ネタバレ。




“非寛容主義”だと言っている学校は何か制約のある社会のようだし、その密室の中で当事者(ある親とその子供)不在の中で決められてしまうという閉鎖的なコミュニティの問題も。子供たちが教師の発言の揚げ足を取った記事を書き、言論の自由を訴える校内新聞の位置付けもマスメディアの危うさのようだし、生徒と先生と校長と親のヒエラルキーもどこか社外の構造が見える。学校で起きた問題を通じて、メタファー的に社会の危うさを描いているのが見事だった。
ラストのルービックキューブは、2人の関係性がギリギリ保たれている希望的なワンシーンだが、エンドロールの警察に連れ去られるシーンの対比も面白かった。
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