odyss

ありふれた教室のodyssのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
4.0
【教師は現代において最も難しい職業】

現代ドイツを舞台に、日本なら中1に相当する義務教育のクラス担任をしている若い女性の物語。

ます注目すべきは、クラス内にイスラム系移民の子が結構いること。
ドイツは第二次世界大戦後、労働力としてトルコ人を始めとする移民を多数受け入れてきました。
ひとつには大戦で若者が多数死去したことでの労働力不足を補うため、もうひとつはナチ時代に異民族を排斥した過去を改めましたとアピールするため。

イスラム系移民は現代ではヨーロッパ各地で問題になっていますが、そもそもの発端はドイツだったわけです。

しかし、当初は労働力として利用した後は故郷のトルコなどに帰すつもりだったのが、そうはならず、移民は子供がドイツで育っていることもあり、ドイツにい続けました。

これが、現代ヨーロッパの移民問題の発端だった。

この映画を見ると、ドイツの公教育ではイスラム女性のいわゆるブルカが認められていることが分かります。フランスでは(公教育では宗教を排除するということになっているので)許可されていないのですが、ドイツではそうではないということが見て取れる。もともと、ドイツの教育ではフランスと違って宗教色を排除していなかったから、移民が増えるとイスラム教も容認するしかなかったのです。

この映画では、学校内に盗難が相次ぐという事態のもと、ヒロインの意向を無視して「怪しい生徒はいないか」という尋問がクラス委員をしている生徒に向けられます。

それだけではなく、ヒロインも職員室においておいた上着のポケットからカネを盗まれるのですが、パソコンの録画機能をオンにしておいて犯人を特定したために、逆に困難が降りかかる……という筋書きです。

ヨーロッパの生徒は日本人と違って自己主張が強いし、PTAからの圧力もあるし、校長の意向もあるし、今どきだから「政治的正しさ」による制約もある。四方から圧力をかけられる教師という職業は、きわめてストレスの多い賎業、と言いたくなってしまう。

そもそも、教員の会議に生徒代表も参加しているのです。以前、フランスの映画を見て、フランスではそうなっているということは知っていましたが、ドイツも同様になっているわけですね。

でも、それは教師が管理職と生徒との板挟みになるという事態を強めるだけじゃないか、という気がします。

善意で教師としての職業をまっとうしようとするヒロインがつぶされるのは、或る意味、当然のことでしょう。

日本でも小学校の教師になる人材が減っていますが、ヨーロッパも同じだなと思いました。
odyss

odyss