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Somebody Comes into the Lightのニューランドのレビュー・感想・評価

Somebody Comes into the Light(2023年製作の映画)
3.4
✔️『Somebody comes into the Ligt』(3.4p)『雪豹』(2.9p)『湖の紛れもない事実』(3.6p)▶️▶️

今年のTIFFは、あまり前向きな興味は沸かず(前任のプログラミング·ディレクターは随分叩かれたが、誠実さの面で、著名で目配せだけの汗の感じれない現在の市山氏より、ましだった気はするし、第二回での初大型コンペでブアマン·ゴダール·ヒューストン作らを招きながら、世界情勢の方から、出品中の最低作に、グランプリを与えた審査員連の姿勢は今も変わらない印象)、ダラッと数本観たが、観るまでタイトルも知らなかった作や、仕事等の諸事情から、観ながら寝る時間に充てざるを得ないのもあり、冴えないところがいつにも増して多かった(タイトルも知らなかった作を観るなんて、映画祭ならではか)。
『Somebody~』。我々の世代、つまり’70年代から意識的に映画を見始めた世代には、今に至る迄トップクラスの人気映画作家ヴェンダース。40数年前に渋谷の街をアハテルンブッシュと練り歩いたのとスレ違ったのが、個人的最大の接近遭遇で、趣味やセンスはいいんだろうが、田舎育ちのこちらはあまり近しさを感じた事はないし、もう20年近く新作を観ていない。
偶々、某映画の併映で短編を観れた。メイン作が、映画か何か分からない薄味の作だったので、コッテリ100%映画そのものの本作品際立つ。
作家と今映画祭の小津賛美に反す、黒澤の『羅生門』へのオマージュの色合い明らかな作(ヴェンダースには小津はアンマッチて、『野良犬』等の方がこの作家にピッタリだ)。モノクロで時たまのバックの板?や、前方に深く繁り陽光=木漏れ日を縦に通す枝葉が視界を動かし求めながら遮り、志村喬に似た出で立ち·歩き道の田中泯の半裸体に、斑に動く影と光が差し込むを、カメラの前後移動やカットの寄り·退き他カッティングから、カメラを傾け希求を表しながら、その生々しい生理と神々しい肉体と顔構えの感性表現を立体的流動的に、音響とも呼応しながら表し続ける。まさに黒澤=宮川の再現で、かなり見ごたえはある。
日本·東京の日常を描いたという新作は、現代の『~日曜日』的なのか。全く観る気はなかったが、これを観ると興味も沸いてきた。ヴェンダース=昭和20年代前半の黒澤的側面の展開を知りたい。
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『雪豹』。今回のコンペは観たいと思わせるのは1本だけだったが、予約スタートが遅れ、完売となってたので、グランプリ上映回を獲る。が、まさかの関心もなく·最も観たくはなかったタイプの作が、受賞。CGも下手で子供向けTVアニメ風で、感動もそのクラス狙い(雪豹との再会や心交流の大自然下の神秘。長老的老父のラサ巡礼資金の軋轢なだめへの転用、ら)。代わりにBBCの番組をそっくり、とは言わないが借りてくる手。室内撮影や、野外でも、長回しカメラワークがありきたり。モノクロの回想シーケンス入り(戻り)もベタで、中国の国家保護動物認定を受け、駆除もなくなり、より野放図になったのに、その被害の補償の手続きが長くややこしく、苛立つ畜産農家。その一軒の息子から出家したが、雪豹と霊的交流できる青年や、彼のつてでその実家に撮影に来たクルー。保護団体や役人·警察らも係わってくる。
まぁ、飽きずにまぁ観てられるが、グランプリ授与どころか、こんな学生映画でも可能なレベル(悪いわけではない、若作りで)、日本とも繋がり深い著名監督のしがらみもあるのかもしれないが、エントリー自体が疑問だ。出だしの車中行は、米映画並みに滑らかなのだが。そのまま、更にシンプルな表現に進んで欲しかったが。半端な粘り不足の作り。
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『湖の~』。ディアスも日本で紹介されて、丁度10年辺りか。始めの頃の、プロとしての、良識や節度のない、とらまえ所のない、映画かなんかわからないもの延々奇形の頃に比べると、延々内向して苦しみ抜く長い描写は残りつつ、カット長さに固執せず·角度やサイズ変やあからさま寄りの図入り、最初の頃にはなかった·何作目からの呼び物となった·モノクロの澄んだ完全構図、不穏な音楽やスロー·扇情的なストリップや射殺や破壊の場の盛り上げ確かさ、ニューズリール的タッチや事後美術による荒々しく強い天災の力、不安定に揺れたり·自在手持ち移動の夢や心理世界描写、らが作品をキッシリ締めて、タイプは違うが嘗てのヴェンダースのミステリー=ハードボイルドクラスに到達してる。
とはいえ、急な深夜仕事で、開映には間に合わなかったし、この後のスケジュールを考え、徹夜の睡眠無しの取戻しの為、遺憾ながらかなり意識的にも寝たので、軽い印象だけ。ICCからも脱退し、世界から孤立し腐敗した、所属する警察組織に憤り·外れて行きながら、麻薬組織の全貌暴きの大任と張り付き有りながら、そのボスも関与の、多才で美しい、最後は今も続く自然環境破壊への激しい迄の抗議活動に嵌まり殺害された女性の足取り追いに、勤務蔑ろ·舞台の被災地に逗留しながら、の名警部補の、同期の女性警視正に、忠告されながらの、破滅的生を描く。罪の意識残りながらの、棄てた家族とのイメージ世界がグロい。TIFFでやった前作(?)と同じタイプの作だが、フィックス長回し統制の洗練が極まった数年前頃から、嵌まっていった友人とは逆対応にはなってきてる、わが反応。
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