第36回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門
人生ベスト級の作品『立ち去った女』ラヴ・ディアス監督新作。ロカルノ映画祭で男優賞を受賞した。
正直前作『波が去るとき』はあんまりだったので期待していなかったが、本作はなかなかよかった。
ディアスは物語よりも引きのある長回しでみせる映画作家だと思っているので、変に話をつくりすぎた前作より、投げっぱなしで全然進まない本作の方がいい。映像力が戻ってきたと感じた。
物語としては警察の腐敗、反抗できない不自由さというのはある。しかし、本作はそれ以上に過去を忘れられない人々への鎮魂歌であると思った。主人公もそうだし、火山灰に埋まった家を掘り続ける人、父の死後にそこに住み着く人など。
映像でそれを示した流石の力量であった。ラヴ・ディアスの映画はこうでなくっちゃ。