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ドクちゃん ーフジとサクラにつなぐ愛ーのMKのレビュー・感想・評価

4.2
鑑賞。
作品のクオリティがどうとか、構成がどうとかは気にならなくて、ドクちゃん…ドクさんの人間性、人間力、倫理観にいち個人として敬服してしまった。

作中のドクさんは自分たちを見捨てた家族に対して、見せもの扱いされていることに理解を示しながらも明らかに嫌悪したり、晒し者になった自分を受け入れつつも、生計のためか観光客との面会を受け入れたり、観衆の前で戯けてみせたり、はたまた戦争の悲惨さを訴えたかと思えば、穏やかになんの変哲もなく、家族からの愛情に涙してしまうような普通のどこにでもいる父親でもあった。

そしてそんなドクさんに育てられた奇しくも双子の子供たちの屈託のないことと言ったら…ドクさんがどんな愛情を注いで二人を育てたのが映像から嫌というほど伝わってきた。

それでも生まれながらに文字どおり一心同体だったベトさんへの思いを語る姿だけは唯一無二というか、かけがえのない尊い存在だと思えた。

彼に生かされている、彼の分まで笑って生きる、死んだら彼のもとへ行く。

身体そのもの、ベトさんという存在の半分をかの戦争によってえぐられ、奪い取られてしまったという、経験、事実。
誰にも共感されることのない自らの運命を受け入れながらも前向きに生きるベトさんの姿、思想は本当に尊敬すべきものだと思った。

社会主義でも民主主義でも原理主義でもなんでもいいからこれ以上、人を傷つけたり、殺めたりしてくれませんように。
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