もりあいゆうや

一月の声に歓びを刻めのもりあいゆうやのレビュー・感想・評価

一月の声に歓びを刻め(2024年製作の映画)
2.9
三島有紀子監督のティーチイン付きの試写会で見せてもらって、申し訳ないのだが、自分には合わなかった。
途中から拷問のようにも感じたほど、響かぬどころか、悪い意味で嫌な気持ちにさせられた。
合わなかったのは、描いているテーマに関する事柄に興味がなかったわけではなく、シンプルに描き方。
監督のナルシシズムに溢れていて、好きな人は好きなんだろうが、自分は虫唾が走るだけ。
こういうナルシシズム、そして「他者から見たら謎の」自信に満ちた人が、周囲の意見にも耳を貸さず突っ走って作品を完成させられるんだろうなと、映画の内容とは関係のないことを考えてしまった。

主要の役者達は頑張っていて、表現も監督のやりたいものをやりたいように表現できているように思う。
見ている時は明らかに妥協したんだなと思った、ロケ現場にいた後ろの通行人がキャストやカメラを意識しているところや、無駄に存在感を出しているところも、監督によれば日常との対比だったらしい。

とにかく私は、
なにもないのに雰囲気だけ出して、それっぽいセリフを言わせて、受け手が考えてね、っていうこの作品が合わなかった。
特に2章は、笑ってほしいんだろうなというところでさえ、色々と透けて見えて嫌だった。
ダンスシーンとかも、あんなのやりたかったんだよね。
ナンニ・モレッティの映画は観たことないけど、何か意味があるんだよね、監督の自己満の。
レンタル彼氏のキャラも、ご都合ファンタジー過ぎて気持ち悪いよね。
劇中でキモいって言わせても、そのキモさは帳消しにはならないよ。
選曲も、自分のトガったセンスを見せつけようと思ったんだよね。


前田敦子は、かわいそうだけど前田敦子のまま。
活動としては完全に俳優にシフトしているだろうけど、観ていて完全に前田敦子の範疇。
頑張って演じてるな、っていうのだけ伝わる。
もう何年かして、脱皮できる日はくるのだろうか?


逆にカルーセル麻紀さんは良かった。
セリフが聞き取れないところもいくつかあり、そこはマイナス点だが、それでも今作の中で一番輝いていた。
そのカルーセル麻紀さんの熱演があったから、この映画、最終章だけで良い、ぐらい。