Binchois

一月の声に歓びを刻めのBinchoisのレビュー・感想・評価

一月の声に歓びを刻め(2024年製作の映画)
-
週刊文春で、阿川佐和子と前田敦子の対談を読んだ。本作が三島監督の性被害の実体験をもとにしていること、監督と前田敦子の間に演出を超える交流があったことが書かれていた。
傷口を掘り返すような、痛みに満ちた制作だったと思う。それであればこそ、こんな雰囲気映画にはしないでほしかった。言いたいことが伝わってこないのだ。
カルーセル麻紀の洞爺湖編と、前田敦子の堂島編は、性被害との連関が明瞭。しかしその間に挟まれる哀川翔の八丈島編の立ち位置が謎すぎる…どう解釈しても他2編とのつながりが見えない。
剽軽にモノマネされがちな哀川氏だが、この演技力は一等である。自然景観も見応えがあり、この章だけ別の映画にしても様になりそう。

ひと昔前まで、幼児への性加害は「いたずら」などと称されていた。
一生残る傷を与える行為を「いたずら」などとは呼べないはずだ。見えない傷への想像力を養うためにも、もっとストレートに伝える映画を見たかった。
Binchois

Binchois