ぶみ

一月の声に歓びを刻めのぶみのレビュー・感想・評価

一月の声に歓びを刻め(2024年製作の映画)
2.0
美しく、凄惨な、罪の歌。

三島有紀子監督、前田敦子、カルーセル麻紀、哀川翔等の共演によるドラマ。
中島、⼋丈島、堂島という三つの島を舞台とした三人の物語を描く。
中島での物語の主人公・マキをカルーセル麻紀、八丈島の主人公・誠を哀川、堂島の主人公・れいこを前田が演じているほか、中島では宇野祥平、片岡礼子、長田詩音、八丈島では原田龍二、松本妃代、堂島では坂東龍汰、とよた真帆等が登場。
物語は、中島のある洞爺湖、東京の八丈島、大阪の堂島を舞台とした三章に、エンディングとなる最終章を加えた章立てで構成されており、メインとなる三つの物語に直接的な繋がりとなるような表現は見当たらなかったため、短編集を観ているかのよう。
そして、第一章にあたるマキの物語では、シリアスな展開かと思いきや、途中から突然ファンタジーがかった一人芝居が始まってしまい、カルーセル麻紀が熱演すればするほど、ドン引きしてしまったのに始まり、第二章では、そもそも観終わっても、この章の存在意義がわからず、かつ哀川の高めの声が浮いてしまっていたこと、第三章はモノクロ映像で、伝えたいことが最もわかりやすかったのだが、それでも、所々にあるあざとい演出が目についてしまいと、どの章も今ひとつ乗り切れなかったのが正直なところ。
そして、最終章に至っては、これまたカルーセル麻紀が熱演しているのだが、いかんせん、第一章で引いてしまったことから、それが空回りにしか見えず、かつ長回しによるカメラワークが鬱陶しく感じてしまったのに加え、最後の最後でピントが合わずという、長回しの意味があったのか疑問に思ってしまったため、物語そのものではなく、作品に対して何とも言えないやるせなさが湧き上がってきた次第。
公式サイトに、「性被害の問題を一部扱っていますが、直接的な描写はありません。フラッシュバックなど症状のある方はご留意ください」とあるように、監督自身の実体験がベースにあるとのことから、直接的なシーンはないものの、注意が必要かなと思われる内容である反面、その殆どがノーサインの変化球で投げ込まれるため、受け止めることが殆ど出来ず、結局のところ、この構成が効果的だったのか疑問ばかり浮かんでしまったのと同時に、そのタイトルのとおり、少なくとも一月に公開すべきだったかなと思う一作。

ラッスンゴレライ。
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