Rita

アンダーグラウンド 4K デジタルリマスター版のRitaのレビュー・感想・評価

4.1
人生は最高の賛美。

1941年、ナチス侵攻下のベオグラード。共産党員のマルコは、親友のクロや避難民を地下室に匿い、武器を製造させ巨大な富を築く。やがて戦争が終わってもマルコは彼らに真実を告げず、地下に閉じ込め続ける。

3時間のブラック・コメディでありながらユーゴスラビアという国が滅亡する話を描いている。

二人の男と一人の女。登場人物全員が愛しくて憎めない人たちなんですよね。クロ、マルコ、ナタリアが肩を組み、酔って歌いながら回るシーンが大好き。ちょっと複雑な三角関係だけど三人一緒いるのが最高で見てて嬉しくなる。

改めて音楽には心を奮い立たせる力があると実感した。生きる為に地を這う。本作から生命力と力強いエネルギーを感じました。食べて飲んでどんちゃん騒ぎ。狂気じみてるけど楽しい。

地上と地下を行き来し、嘘を演じて友人でもある同志を騙す様子が皮肉で面白い。地下の人は本当に戦争真っ最中だと信じてるからサイレンの音を聞いて避難する地下の人々を見るのがお決まりの日常。手動で回すとサイレンや諸々の音が流れる仕組みで、回してるのはマルコなのにみんな必死に逃げ隠れしてるから目撃されることもないしこっちまでヒヤヒヤさせられる。

地上では平和、地下では戦争。武器作ったり隠れたり一生懸命な姿になんだか馬鹿馬鹿しく見えるんだけど地下の人たちはマルコに隔離されてて戦争が終わった事実を知らないんだから仕方ないよね。

地下の様子を覗きながらマルコとナタリアが楽しそうに踊ってるシーンが結構好き。マルコはあまり顔に出てない感じで分からないけど少なくともナタリアは罪悪感を感じてるから2人とも現実逃避というか派手な事してすべての行いを正当化しようとする。ちなみにレコードで流れた「Ringe Ringe Raja」のドイツ語の曲が良い。

マルコとナタリアをモデルに映画撮影が始まり、集められた役者たちがみんなそっくり!って思ったら本人が演じてるのね。地下で育っクロの息子が地上に初めて出た時、生き物の名前や湖に驚いて物や生物の名前をクロが教えてあげてるシーンほっこりする。

彼らの理想郷でマルコ夫妻が申し訳なさそうに手を振り皆の元に駆け寄り、クロは温かい家族のようにて手招きして歓迎してくれる。怒りも喜びも紙一重のようだ。ラストでは、カメラに向かって視線をやり喋るイバンを写しながら仲間たちをバックに映すまでの回るカメラワークが良い。

「バビロン」に似たような疾走感のある映画だった。少なくともデイミアン・チャゼル監督は今作に影響を受けているのかもしれない。止まることのない慌ただしく、騒がしく進んでいく。終わることのない永遠のアンダーグラウンド。

強烈な音楽が全て鮮明に頭に残っている。完全版は5時間もあるらしく、そちらも見てみたい。

https://youtu.be/zreCjzOjhI0?si=0NNDIKjKo5fe_IQ6
Rita

Rita