ジャパンプレミアにて鑑賞。
「なぜ人は旅をするのか」をテーマに日本と台湾2つの舞台、18歳と36歳2つの時間軸で拡げられる出会いと別れの物語。
おもしろくないわけではないんだけど、いまひとつ記憶に残らないというか、心に響かないというか......
定番フォーマットをある程度踏襲しつつも、実はそんなに恋愛映画の要素はなくて、根っこは自身の“アイデンティティ”についての話なので、旅や記憶といった要素が後からじわじわと効いてくる作りになっている。
主人公が18歳のパートと36歳のパートが交互に描かれ、観客は主人公と一緒に過去の記憶を思い出し辿っていくという構図になっているのだが、ここに乗れるかどうかが鍵。
ただ、この2つのパートのバランスが少し歪なのがいまひとつ心に響かない理由だと思う。
見る側の重心としては36歳側に寄って観ないといけないんだけど、映画としての重心はどちらかというと18歳側の物語に重心が寄ってしまっているので、全体を纏うテーマが若干ぼやけてしまっている気がする。
36歳の主人公が旅をするパートでは、例えば道枝駿佑演じる幸示が発する「最初の瞬間は心のシャッターで」というセリフで、写真や絵が持つ意味はなんなのかというところが描かれ、それが後の展開にボディブローのように効いてくる部分はある。こういうところはすごく良かった。
現地の人との交流、見知らぬ土地の風土を体験する、こういったことの他にも、かつてそこにいた人たちの軌跡に触れるという面も旅にはあるはずである。今そこにはいないけれど、たしかにそこにいた人たちとの接続こそが、劇中で語られる【自分がそこに存在することを確かめる】という“旅”の意味となるのである。
実際に36歳の主人公がなぜ旅をするのかというところを考えると、まさに過去との接続を通して自分が自分であることを確かめる行為であることがわかるのだが、この部分においていまいち18歳のパートと36歳のパートがリンクしてこない。
アミのスケッチブックに日本の風景画が書いてあって、その風景についての話をアミから聞いていてみたいな描写が少しあるだけでも、ジミーが旅をすることで、アミの歴史と接続するという意味が生まれるし、せっかく“写真”、“絵”、“記憶”という3つによる過去の記録という要素を出しているのにそれを活かさないのは勿体ないなと思う。