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青春18×2 君へと続く道のたくのレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
3.7
人生に躓いた台湾人青年が、大切な思い出である日本人女性とのひと時の交流を見つめ直して行くほろ苦い青春ストーリー。藤井道人監督がこういうベタな青春モノを撮るとは思ってなかった。惹かれ合う男女がなかなか結ばれないというプロットは、ついこないだの「パスト・ライブス」や「糸」など一つのジャンルになってて、18年という時の流れはまさに「糸」がそうだったね。後半が半ば予想通りの展開でちょっと面食らったけど、清原果耶の涙の演技が相変わらず素晴らしくて終盤泣けた。

自分が創業して発展させた台湾のゲーム会社を手放さざるを得なくなった36歳のジミーが、自分が18歳の頃に台湾にやって来たバックパッカーのアミとの懐かしい日々を思い出しながら、アミの生まれ故郷の福島を訪れる旅に出る展開。18歳のジミーがアミの前でひたすらモジモジする様子がちょっと見てられなくて、そこを年上のアミがリードするお姉さん的な感じが良かった。

現在のジミーが新潟に着いたところで、トンネルを抜けた雪景色を俯瞰で撮る映像が岩井俊二っぽいなーと思ったら、直後にジミーが「『Love Letter』みたいだ」って言うのでびっくりした。これは偶然ではなく、アミの抱える秘密が「Love Letter」の話に重ねられてて、アミが映画館で同作を観て涙するのが伏線になってた。でも本作の話の軸は、どちらかというと「ラスト・レター」の方が近いように思った。アミが突然日本に帰国することになってからの展開は読めてしまったというか、そのベタな展開はやめてくれと思ったらやっぱりそうなったという感じ(これは「アナログ」でもそう思った)。

深読みすると、アミが初めてカラオケボックスの控え室に案内された時に嫌な咳をするシーンがあり、ここで早くも難病を予想してしまった。でもそこはさすがの清原果耶で、涙の演技力で全部持って行ったね。終盤でアミ視点から展開を辿り直すのは王道演出で、その後にさらにジミー側からも経緯を辿り直し、冒頭に繋がるのはちょっと新鮮だった。タイトルにある18の数字は、ジミーの過去と現在の年齢を指すと同時に「青春18きっぷ」にも掛けてると思うけど、原作は台湾人の紀行エッセイなんだね。
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