鶏

青春18×2 君へと続く道の鶏のネタバレレビュー・内容・結末

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

『過去と現在のシンクロが心地いい絶品ラブストーリー』

18年の時と日台の国境を超えてシンクロする感涙必至のラブストーリーでした。とにかく主演のシュー・グァンハンと清原果耶が最高に良く、また脇を固めた日台の俳優陣もシブ過ぎで、堪えられませんでした。シュー・グァンハンは1990年10月生まれだそうで、実年齢は33歳でしたが、18歳と36歳のそれぞれの時代のジミーを完璧に演じ分けており、非常に感心させられました。ダブル主演の清原果耶の演技も抜群。心の底の絶望を薄っすらと表現しつつも、表面的にはとっても爛漫な表情を出して観客の気持ちを虜にしていく演技は、彼女にしか出来ないのではとすら思えました。

また、日台、特に日本の綺麗な風景がいくつも紹介され、こちらも素晴らしかった。ロケハンにはJR東日本が協力したそうで、公式サイトには日台それぞれの”聖地”の場所が紹介されていました。特に印象的だったのが、ランタンを空に飛ばすランタン祭り。しかも日台両国で行われているということを、本作で初めて知りました。実物を観たら本作を思って泣いちゃいそうです。

以上、感涙必至、かつ非常に美しい風景が楽しめる作品でしたが、ひとつだけ注文を付けるとすれば、余りにご都合主義的なお話だったこと。アミが台湾にバックパック旅行をし、財布を落として困っている時、たまたま見つけたカラオケ屋でバイトしたいと申し出る。確かに「KOBE」という名前のカラオケ屋ではあったけど、そこのオーナーが神戸出身の日本人だったなんてねえ。というか、就労ビザもないのにバイトして大丈夫ってツッコミもない訳じゃないしねえ。

またジミーが来日してJR東日本に乗って旅をするパートでも、松本の居酒屋に行けば台湾出身のリュウ(ジョセフ・チャン)がいるお店で、店が終わった後に市内を案内してもらった上に人生訓を聞かせてくれるし、飯山線で移動中に乗り合わせた18歳の幸次(道枝駿佑)がトンネルを抜けた瞬間に広がる雪景色を紹介してくれるし、長岡のネットカフェというか漫喫に入れば、店員(黒木華)がランタン祭りまで車で連れてってくれるし、アミの故郷の只見に行けば、通りがかった小売店の店主(松重豊)がアミの実家までまたまた車で案内してくれるし、いくら何でも偶然と親切が重なり過ぎでしょうよ。

普通ならいくら何でもやり過ぎだと白けてしまってもおかしくないところですが、何故か本作の場合はそんなご都合主義がむしろ心地よく、主演の2人にのめり込むようにして感情移入していくのだから、藤井監督の術中に嵌ったということなのでしょう。

なお、作中ジミーとアミが鑑賞した岩井俊二監督の「Love Letter」(1995年公開)を帰宅後U-NEXTで鑑賞。昔と今を言ったり来たりして物語が進む点、遠く離れた想い人に会いに旅をする点、文字通り”Love Letter”が物語の鍵となっている点など、本作は「Love Letter」のオマージュと言って良い感じでした。そして、アミが働いたカラオケ屋の店の名前が「KOBE」だったのも、「Love Letter」の主人公・渡辺博子(中山美穂)が、神戸に住んでいたところから取っているんだろうなあと想像したところです。

そんな訳で、「Love Letter」を合わせて観た相乗効果で、より一層楽しめた本作の評価は★4.4とします。
鶏