ジェイD

青春18×2 君へと続く道のジェイDのレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
4.4
過去の恋情に想いを馳せてほろ苦くなる系のラブストーリーはやっぱり良いですね〜…。丁寧で繊細な画作りとちょっとした展開の工夫があればベタもちゃんと沁みるもの!青春を終わらせるための、ラブレターに対する返事のような淡々なロードムービー。

自ら立てた会社を追われた実業家のジミー。ふと立ち止まった自分の人生の中で、18年前に出会った旅人・アミとの思い出が蘇った。彼女との青春にけりを付けるため、ジミーは彼女の故郷に向けて一休みの旅へ赴く。

18歳と36歳を一身で演じ切るどこか青く黒いグァンハンさんとからかい上手の清原さんに上手いこと心をぶん回される美しい映画でした。ジミーの視点で描かれることで18年分の空白が少しずつこちらに提示されていくようで、先がわからないままどうなるかわからない…いや、何となく読めるかもしれないというまさに目的の無い旅のような時間が続く。

あまりに可憐さと愛嬌に満ち溢れすぎているアミとあまりに恋愛経験無いオーラに満ち溢れすぎているジミーの王道すぎるロマンスにニヤけたと思いきや、彼女と別れてから闇雲に走り続けた先に大人として休まざるを得なくなった現在のジミーのロードムービーが交互に来るから、これが不思議とのめり込んでしまうのだな。思い返すと、今作はラブストーリーとして起こる出来事自体はだいぶベタなんだけど、過去と現在を行き来する構成が案外効いてて、いざスクリーンに真相が映るまで展開の確証が持てない心のザワザワがある。

旅の中で出会う一期一会が長い長い人生の中でずっと輝き続けてしまって、いつのまにか年月が経ってあの人今どうしてるんだろうと思うこともあったりなかったり。ジミーがアミの故郷・福島に向かう道中で出会う人々も、いつの日かジミーさんどうなったかな、なんて思うのだろうか。そういうのって、だいたいもう会えないかもしれない事の方が多いのにね。

長い時間が経ってようやく書くことができたラブレター、いやLove Letterに対するラブレター!一度立ち止まって自分の生きてきた人生を肯定してからもう一度踏み出すための旅。18×2という言い回しがまた良い、それだけの年数がそっと隣に寄り添ってくれる一作でした。
ジェイD

ジェイD