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青春18×2 君へと続く道のニコのレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
3.8
映画館で観てきました。

ガラケー、バックパックの旅、ミスチル、モーニング娘。、1995年公開の岩井俊二の『ラブレター』、フラッシュバックする2000年代初頭。
そこに、トンネル抜けて雪国、台南の長閑な風景、ランタン登る澄んだ空、情緒溢れる信州の町並み……映像美とカメラワークで魅せる。
エモいというより、そのままエモーショナルである、という言葉に尽きる。

藤井道人監督が1986年生まれだから、シューグァンハン演じるジミーと同世代。

まだ何者でもない18歳から18年が経ち、36歳ともなると、それなりにキャリアを重ねて、何者かになれなくとも1人の社会人としての片鱗が見えてくる。
アラフォー以上からすると、まだ36歳というのがミソなんだけど、きっと36歳からすると「もう36歳」なんだろうな笑

何も持っていないけど、まだ何も失っていない18歳。小っ恥ずかしくなるような青臭さ、ときめきや情熱、同時に幾つかの後悔。

私たちは、18歳の時思い描いていた大人になれているのか?って、なんだか、いくらでも感傷的になれてしまう、誰もが経験しうる普遍性。

だからか、ストーリーそのものは比較的、陳腐に感じる。
なぜなら、普通の人の人生にドラマはあっても、なかなか"ドラマチック"とまでいかないから。そしてストーリーが途中で読める構図。
でも、描き方がうまかったし、主演の2人が魅力的で観入ってしまった。特に18歳と36歳を両方演じるシューグァンハン。天才。
本当に18歳に見えるし、36歳に見えるの。
清原伽耶もやっぱり上手い。

余談だけど、『初恋』を完全に成仏させられた人って、どのくらいの割合いるんだろ。
初恋相手と結婚した人、憎むくらい嫌いになった人以外、なんだかんだ思い出の引き出しの、結構目立つところに仕舞ってる気がする。
思い出して微笑ましかったり、逆にあの時こうしておけば、あの時こうだったら…を考えて、たまに取り出して眺めたり磨いたり。

誰もが経験した初恋の感情、同じ時代を生きてきた世相感、普遍的で共感性に共鳴して、見終わって反芻してしまう。

初恋と、あの頃と、こうじゃなかった方の自分自身。
そこもひっくるめて『今』なんだけど、なんだろう。このギュッと胸を締め付けられる妙な感傷は。

エンディングがミスチルなんだけど、これがまた良い。1990年初頭の、初期のミスチル感。小林武史色の無い、洗練されてるのに、どこか青くて、ダサくて、痛い頃のミスチル。

こうして、恐ろしいまでに余韻に浸れる映画でした。
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