たーきー08

青春18×2 君へと続く道のたーきー08のレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
4.0
超一流の料理人が豪華な食材や凝った調理方法を用いずに、あえてシンプルなオムレツで勝負して、ミシュラン獲っちゃったみたいな映画(笑)

※作中に出てくる岩井俊二監督の“Love Letter”は全然観てなくても大丈夫です
共通項なくはないけど、そんなんよくある程度だし、観てたらジミーが雪国で叫んだシーンがわかる程度だから、変にこのシーンは“Love Letter”観てないとわからないんだろうかみたいに思うことはない!

この作品すごいのが、いかにも玄人が好みそうな高度で難解な構成や、メタファー、モチーフ、過度な演出を用いずに、しかもストーリーは序盤のセリフで全て予想できるのに、藤井道人監督お得意の繊細な色彩や、細かく手の込んだカット割りで最高の仕上がりになってるのよ

あの藤井道人監督なんだから、ドラマチックにする術なんていくらでも持ってるのに、そこに頼らない、なのに大号泣させられる。とんでもないことよ
“BLUE GIANT”はそりゃ泣くよね、あれはずるいもん(笑)
ドラマチックな展開や、自分と重ねる以外で泣く映画って意外となくない?

時制何度も変わったりするなら、ノーランとまではいかなくてももっと仕掛けたり、伏線を溜めて溜めて放出してもいいんだよ?
“ただ君を愛してる”とかみたいにラストにえげつない展開とかさ
でもしないのよ
秒で時制違うシーンでのセリフ拾ってくるから、早すぎてこれは勘違いだろうと思ってしまったほど
変に考えずに素直に感情移入しやすいし、何より原作がそうなってるんだろうけど、この構成のおかげでライト層の人も楽しめる親切設計

何度も時制入れ替わるといくつか弊害があって
どの時制かわからなくなるのを、色彩や舞台、ジミーをはじめに映すことによって防いでるし
切り替わるときガチャガチャしちゃうのを、景色をリンクさせたりしてシームレスに描く
本当丁寧な映画作りですわ

これは自分では全く気付けなかったんだけど、なんでジミーは日本であんな遠回りをして行ったのか問題
順路を繋いでいくと時計回りになってるんだってさ
あみが愛用していた香水の名前は“時の流れ”
あみとの別れで止まっていたジミーの時を再び動かすための旅だったと
香水の名前は絶対どっかで効いてくると思ってたけど、地理に明るくなくて全くわからんかったなー
1分映画批評さんさすがの考察でした

清原果耶さんの演技はもう言わずもがな
あんな先輩いたら最高だよな
しかも初々しいチェリーの時だったらいやらしい意味ではなく破壊力とんでもないと思う

個人的に一番印象に残ってるのは黒木華さん
正直、そんな見せ場やキャラが立ってるわけでもない役なのに、うっま!って思わせられたもんなー

ただ道枝くんだけは物足りなくて、ちとノイズだった
役が好みじゃないのは置いといて
演技が下手ではないし、他の役者さんたちがすごすぎるから余計目立つってのはあるんだけどさ
カラオケでまぁ音程は取れてるけど、聞いても特になんも感じないみたいな
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