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ニュー・オリンポスでのatm09strsksのレビュー・感想・評価

ニュー・オリンポスで(2023年製作の映画)
4.0
運命のいたずらで会えなくなってしまった二人のその後の30数年を描く、スマホがない時代だからこそのすれ違いドラマ。
内容も音楽もメロドラマの王道みたいな感じだけど良かった。
1978年の若い彼らにとって、恋は一瞬の華火であったはずなのに、その思いは埋み火となって、あるいは消えかけながら青く、あるいはゆらめきながら赤く彼らの中に残り続けていたんだろうなあ。
あのまま再び会わずにいれば、その埋れ火は、叶わなかった青春の甘美な追憶としていつまでも心に残り続けたかもしれないのに、30数年という時間が彼らにもたらしたもの、それは家族であったり相応の地位であったり、いわゆる分別のある大人への変化に他ならず、そうした現実を前に、すでに白秋の年代を過ぎた彼らにとって、この再会はむしろ残酷ではなかったか。
長く一緒にいるパートナーに「ずっとあんな目で見てほしかった、今夜彼を見てた目で」など言われた方もつらいが、こんなセリフを言わずにおれない相手の心情もまたいかばかりか。
そしてエンディングのセリフ「また時々思い出して」
そう、「また会おう」ではないのだ。薄暗闇の路地でのこのシーンは、大人になってしまった者が抱く愛の苦さが伝わる印象的なラストシーンだった。そして、その対比のようなエンドロールの二人を観て号泣。こういう美しい悲しさはイタリア映画ならではだなあ。
久しぶりに「あんなに愛し合ったのに」が観たくなった。

ところでエネアのパートナーの人、ヘラクレスかと見まごう程筋骨隆々で彫刻みたいだった。
ちなみに、ボカシなどという無粋な処理はされていないので、チョット目のやり場に困るシーン有り。
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