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長屋紳士録 4Kデジタル修復版のparaのレビュー・感想・評価

4.0
最初に「ヴェンダース、小津を語る」が上映される。
これが有意義なお話。
海外では1970年代まで溝口、黒澤、大島作品を観ることが出来たものの、小津作品は1作品もなかった(存在も知られていなかった)その理由が日本の配給会社によるものだったとな。

戦後帰国した小津安二郎が最初に撮った作品の4kデジタル修復版。
焼け野原の東京を逞しく生きる市井の人々を描いた人情喜劇。飯田蝶子の味のある演技。
終盤に語られるセリフに現代の日本人が失ってしまった人との互助の精神にしんみりとし、
今と変わらぬ築地本願寺と上野の西郷さんとの対比で当時の東京下町の様子に終戦後の日本に思いを馳せ、
ラストは突然ドラマから外れて当時の現実に切り替わり戸惑いますが、映画には時代を残す役割もあることを強く感じる。
トークでは小津作品(本作も)には希望を感じると語られていましたが、可笑しさや温かみのある濃密な72分でした。

上映後のトークショー:カルロ・シャトリアン(ベルリン映画祭 アーティスティック・ディレクター)、クリスチャン・ジュンヌ(カンヌ映画祭代表補佐 映画部門ディレクター)、市山尚三氏

シンプルでありながらの複雑さ。

tatami level 海外では小津監督のローアングルをこう表現しているそうだ。

トークも有意義でした。このトークを聞いてますますケリー・ライカートが語る小津安二郎の上映観に行きたかった…と思いました。

TIFF2023 小津安二郎生誕120年特集上映

予約した1作品行けなかったためこれが今年のスタート。
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