みかんぼうや

清作の妻のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

清作の妻(1965年製作の映画)
3.9
【人間の持つ損失回避性と孤独の苦しみが生み出す凄まじき、狂愛。】

皆さま、昨年は大変お世話になりました。本年もよろしくお願いいたします。
実は大晦日に初めて新型コロナに感染し、2023年はコロナとともに始まりました。ただいま人生で経験したことのないとんでもない喉の痛みに襲われ、その痛みにより、この3日間、1日1~2時間しか寝られていない日が続いています。

そんなわけで、年末に観た映画数本のレビューを書く気力もほぼ無く、当分は記録目的の短めレビューでいきたいと思います。

そんな波乱の幕開けの2023年レビュー1本目にふさわしいこの一作。
この作品は・・・「地の群れ」や「飢餓海峡」に負けず劣らずの強烈なまでの負のエネルギーを描いた衝撃的な邦画。オープニングから怪しげな雰囲気は感じていましたが、後半はずっと胃を握り潰されるような感覚でした。

ある村の貧乏な家の出身で17歳の頃から60歳を超える富豪の男の妾となっていた娘のお兼(おかね)は、その男の死をきっかけに、母と村へ戻る。村では、「アバズレ」と虐げられ村八分にされる娘とその母。その母が亡くなり、独り身となる頃、戦地から村で一番若い模範青年として名高い清作(せいさく)が村に戻って来る。2人は出会い、清作は家族や周りの猛烈な反対を押し切りお兼を求愛する。そんな中、日露戦争の火ぶたが切られた・・・

ネタバレになるのでこれ以上は触れませんが、この作品で起こることは、ある意味、人間が持つ“損失回避性”の最たる形なのかもしれません。新しく得る何かよりも失うことへの恐怖とそれまでの孤独による苦しみが創り出す衝撃的作品です。
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