天豆てんまめ

清作の妻の天豆てんまめのレビュー・感想・評価

清作の妻(1965年製作の映画)
3.4
平成の妖艶、真木よう子についてレビューで触れたが、昭和を代表する妖艶な女優といえば、若尾文子が筆頭に来るだろう。中でも、増村保造監督の作品でその妖しげな艶は一層、輝いている。この作品は、日露戦争時代に愛する夫を戦争へ行かせないようにと恐ろしい行動をとったある女の話。

若尾文子扮するお兼は、貧しさ故、ある老人の妾として生きていたが、老人があっけなく死んでしまう。彼の遺産を手にして生まれ故郷の村に戻るが、村人は軽蔑の眼差しで見ている。そこに村一番の模範青年だった清作(毎日、早朝に鐘を彼が鳴らして皆を起こす真面目君!)がお兼に惚れて、村人の反対を押し切って結婚する。真面目な男は妖艶な女に弱い。これは鉄板(笑)お兼の方も辛かった半生の末、初めての本気の愛に、清作を好きで、好きで、好きで、好きで、仕方なくなる。とにかくすごく好きになったんだということが彼女から伝わってくる 笑

そんな最中、清作に招集令状が届き、彼は日露戦争の戦場へ向かい、お兼は孤独に耐えられない、、そして清作が名誉の負傷を受けて送還されたのだけど、すぐにまた戦場にでなくてはならない。2度と戦場に行かせたくない、彼無しでは生きていけない、と思った彼女が、、、出征の宴の際にあるものを拾ったのだが、それは、一本の釘。※拾った瞬間が、そうこのジャケットの写真。決定的瞬間(笑)

で、五寸釘で清作の両眼を刺した。ブスリ。ひえ~。

その先に、どう愛が転がっていくのか、狂気の果ての盲目の愛というが、
お兼は2年監獄、清作は失明。村人は彼らを売国奴と呼び、、その後の再会で彼らがどんな境地に至るのかが見応えがあった。いびつで狂気じみた愛の物語だが、その濃過ぎる情愛と若尾文子の狂気がどこかもの悲しい。