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東京物語 4Kデジタル修復版のサンのレビュー・感想・評価

東京物語 4Kデジタル修復版(1953年製作の映画)
4.0
小津安二郎作品2作目、代表作。暮らしを描くのが絶妙で、ほっこりの中に誰もが抱きうるけれど言葉にしていないような不満が描かれている。そしてそれが今を生きる人にも共通する普遍的なものに感じる。
尾道からおじいさんおばあさんが子がいる東京に出てくる物語。家族のほっこりを描くのがうまい。こんな表現は良くないかもしれないけれど、味わい深いサザエさんをみているよう。子供が勉強机が動かされたことに不満いうシーン。「こんな時だけ勉強のこと気にして、普段やらないでしょ!」って分かるなあ。
麥秋とは設定が違い、紀子が娘ではなく、戦死した次男の妻になっていた。そこに少し混乱した。
紀子の独白「私ずるいんです、しょうじさんのこと忘れてしまう、何もなく過ぎていくのがつらいんです」
そう正直になれるところがすごい。紀子は今作でも素敵だ。母を止めてあげて肩揉みをしてあげて気遣いがいい。
一方で実の娘は仕事が忙しくおばあさんにかまってあげる時間もない。まだ亡くなっていないのに「喪服持って行く?」と仕事が忙しく母の死よりも現実的な問題に先に目がいってしまう

子供が大きくなるとどんどん離れて行く
京子の言葉「親子ってつまらないわ」
「みんなそうなるのよ、自分の家族があるから」と紀子
「自分の子よりあんたの方が良くしてくれて」おばあさんの言葉

「子はおらんはおらんで寂しいけどもおったらおったで邪魔にしやがる」
まだ子である私には自戒したくなる言葉だった

「私たちはええ方です、よっぽどええ方です」
親に将来こう思わせてしまうかもしれないと考えると辛かった
縁側に近いところに座って蚊取り線香たいている描写の美しさ。美しい暮らしや人間関係をしっかり見せてくれる
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