ブルーノ

東京暮色 4Kデジタル修復版のブルーノのレビュー・感想・評価

東京暮色 4Kデジタル修復版(1957年製作の映画)
4.7
 今まで見てきた小津作品では、あくまでも通奏低音的に暗澹たるものが描かれてきた印象だったが、本作品ではそれがあまりにも露骨に表出していたので面食らってしまった。ここまで無愛想な女性もガラの悪い男性も監督作品では見たことがなかった。明子の中絶を家族が最後まで知ることのなかった展開も衝撃だった。

 何より有馬稲子が素晴らしく、警察署で途方に暮れる様子はジェームズ・ディーンを彷彿とさせた。明子が立派な父や姉に劣等感を覚え、自己嫌悪の矛先を家族を捨てた母親に向ける筋は『エデンの東』味を感じた。

 個人的には、コントロールフリークで知られる監督が、赤ん坊や犬を画面に登場させたのにも驚いた。原節子と赤ん坊がシンクロしてカメラに振り向くシーンは何テイク撮ったのだろう。
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