ノラネコの呑んで観るシネマ

クリティカル・ゾーンのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

クリティカル・ゾーン(2023年製作の映画)
4.1
フィルメックス。
テヘランを車でまわり、ドラッグを届ける売人の男が主人公。
ペットの犬はなぜか「さん」付けで、ED 持ちのため彼女には出て行かれたらしい。
彼の顧客は、介護ホームの老人たちから立ちんぼのトランス女性まで多種多様で、一晩のお仕事ドライブには、キメキメにキマった取引相手のCAさんやジャンキー息子を抱えた母親の人生相談など、様々な人たちが乗り込んで来る。
作りとしてはパナヒの「人生タクシー」にかなり近いのだが、あんな陽性な話ではなく近未来的なムードを漂わせたシュールで退廃的な風刺劇。
無駄に酔ったけど、車のハンドルにカメラくっ付けて、ぐるぐる回した作品ははじめて観たかも。
設定の時点で当局の検閲通るわけないので、成り立ちから勝手に作って国外持ち出しが前提のインディーズ映画。
イランのドラッグ問題は非常に深刻らしく、体制側から啓蒙的に描いた作品もあったが、権威主義政府が締め付ければ締め付けるほど、コッチに逃げる人は増えるんだろうな。
色々シニカルな一本。