流離

しあわせのかおりの流離のレビュー・感想・評価

しあわせのかおり(2008年製作の映画)
4.5
滋味豊かな「しあわせ」

以前登録していたサイトに書き込むようになって、改めて、自分の好みというのがはっきりわかってきたような気がする。何も起こらなくても、派手さが全くなくても、盛り上がりがなくても、日常のほんのささいなことを描いたような作品が、私はかなり好きなのだ。

王さんが野菜を切る音、中華なべに具材を入れる音、かき回す音、炒める音、揚げる音・・・例えば火をつける「ボォッ」という音さえも全てが心地よく、印象的に響いてくる。料理からたつ湯気、食べる人の笑顔が美味しさも伝えてくれる。型にはまったストーリー、登場人物の造詣だけれど、そのぶん、落ち着いてゆったり観ていられた。

王さん演じる藤さんと、貴子を演じる中谷さんが、とてもよかった。三原監督の撮る藤さんはいいなぁ、好き。中谷さんはエキセントリックな感じがするけれど、それが貴子の設定に合っていて、料理をする姿もとても素敵だった。それから、王さんを料理人として認め、長年サポートしてきた八千草薫さんの柔らかな笑顔が、とてつもなく優しい。

静かで長いラストシーンに漂う空気感がよかった。「王さんの料理は飽きがこない」という貴子の台詞があったけれど、私にとっては何度観ても飽きのこない作品。DVDを買ってしまった。BOXのパッケージで、泣けた。?・・・!→涙。
流離

流離