煙

ショコラの煙のレビュー・感想・評価

ショコラ(1988年製作の映画)
4.2
冒頭、波打ち際で戯れる親子。それを眺める女性のショットをはさみ、再び親子。海岸のパン。同軸でより遠くにカメラを置いて再び木々越しに海岸のパン。撮影:ロベール・アラズラキ。

上映後、坂本安美氏トークショー。いつもながらすばらしい。以下、備忘。
カメルーンで撮影された半自伝的物語。少女と使用人の目を通して開放前夜のアフリカを描く。フランソワ・クルーゼ演じる植民地行政官は父がモデル。クレール・ドゥミは生後二ヶ月でアフリカに渡り、大陸を転々としていた。小児麻痺としてフランスに戻ったクレールはアフリカから切り離されたと感じ、フランスでは異邦人という自意識が育まれたとのこと。フランスの高校の歴史の先生が映画好きで、また母も水曜日は映画の日として映画に親しんでいたため、高等映画学院イデック(IDHEC、現在のフェミス)に進んだ。そこで、アンリ・アルカン(撮影監督)などからの教えを受け、当時ディックに傾倒していたドゥミはイェール映画祭にSF作品を出品する。卒業後はロベール・アンリコ監督『追想』の助監督となり、主演のロミー・シュナイダーと仲良しになる。その縁で『ショコラ』でもシュナイダーのメイクさんに参加してもらっている。また、ジャック・リヴェット『夜警』にも助監督として参加。リヴェットはルノアールのドキュメンタリーを撮っているが(その際の助監督はユスターシュ)、自身のドキュメンタリーにはドゥニを指名。ドゥニは、ニコラス・レイの子どもたち、ヴェンダース『ベルリン/天使の歌』、ジャームッシュ『ダウンバイロー』にも助監督として参加。『パリ・テキサス』に参加した際、同じ荒野でも自分にはテキサスの風景ではないどこかがあると気づくに至り、原点の1950年代のアフリカを舞台にした『ショコラ』を監督した。使用人プロテを演じたイザック・ドゥ・バンコレが高貴とさえ言えるたたずまい。バンコレは1980年代のフランスを代表する劇作家ベルナール=マリー・コルテス(1989年に41歳という若さで亡くなる)作の演劇に主演していたところを抜擢された。ラスト、解放後のカメルーンの飛行場で楽しそうに働く3人のバックの音楽はアブドゥーラ・イブラヒム。
『死んでもへっちゃらさ』冒頭部上映。パリ郊外のランジスが舞台。ドゥニ作品常連のアレックス・ディスカス、ソルヴェーグ・ドマルタン出演。モンテ・ヘルマンの『コックファイター』にインスパイアされた作品とのこと。
『パリ、18区、夜』冒頭部上映。エカテリーナ・ゴルベア(リトアニアから車で登場)。アレックス・ディスカス出演。
『35杯のラムショット』は小津安二郎『晩春』のオマージュとのこと。冒頭部上映。郊外に向かう電車(RRB線?)に黒人しか映っていないリアル。娘役マッティ・ディオップは映画監督として、『アトランティックス』でカンヌ国際映画祭グランプリ受賞、ドキュメンタリー作品『Dahomey』でベルリン国際映画祭金熊賞受賞。叔父であるセネガル映画の巨匠、ジブリル・ジオップ・マンベティ監督を追ったドキュメンタリー『千の太陽』も監督している。
『ホワイトマテリアル』は『35杯のラムショット』と同時並行で製作。『ショコラ』と対をなす映画で、ユペール演じるマリアの盲目さが際立つ。マリアは、『桜の園』で「それはわたしの頸に結えつけられた重石で、その道づれになってわたしは、ぐんぐん沈んで行くけれど、やっぱりその重石が思いきれず、それがないじゃ生きて行けないの」とのセリフを吐く女主人ラネフスカヤと重なる。内戦初日の36時間を描いている。ユペールが小さいからだで大きくアフリカの大地を駆けずり回る。
『ハイ・ライフ』冒頭部上映。ずっとやりたかったSF作品。放棄させられてる恐怖、人間の欲望の神秘を描く。ジュリエット・ビノシュ素晴らしい
『ガーゴイル』音楽Tindersticks。『ネネットとボニ』。『美しき仕事』2024年5月公開。
『U.S. Go Home』冒頭部上映。グレゴワール・コリンが自室でタバコをふかしながらめちゃくちゃ踊りまくるのが超かっこ悪くて超かっこいい(The Animals”Hey Gyp”)。コリンは黒沢清の次作に出演。アルテからのオーダーは「思春期の一曲でダンスシーンを入れること」だったとのこと。

以下、ネットから無断転載。
アルテ・フランス・シネマ Arte France Cinéma
アルテ(Arte、Association Relative à la Télévision Européenne)は、1992年5月30日に開局したドイツとフランスの共同出資によるテレビ局で、フランス語およびドイツ語で放送。アルテ・シネマ・フランスは同局の映画部門。1990年、プロデューサーのピエール・シュヴァリエが同テレビ局で良質のテレビプログラム・映画作品を製作すべくセット=アルテからセット・シネマを立ち上げた。2000年にセット=シネマは新たにアルテ・フランス・シネマに。アサイヤス、アケルマン、クレール・ドゥニらがそれぞれ自らの思春期について撮ったシリーズ「彼らの時代のすべての少年、少女たち」はシュヴァリエによる企画。創立以来、アルテ・フランス・シネマは良質なプログラムを提供し、新しい才能を支援し、ヨーロッパのみならず世界中のクリエーションに活力を与えることをその役割としている。2012年より、オリヴィエ・ペールがディレクターに就任。ワン・ビン、ジャ・ジャンクー、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン、アリーチェ・ロルヴァケル、マルコ・ヴェロッキオ、ラヴ・ディアス、黒沢清ほか数多くの作家たちの作品を製作支援している。
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