ハル

罪と悪のハルのレビュー・感想・評価

罪と悪(2024年製作の映画)
4.0
ヤクザと半グレが絡むノワール系のヒューマン・ミステリーとして非常によくできていた。
少しジャンルは違うけど『ヤクザと家族』
や『楽園』が好きな方はハマるはず。

序盤は事件の発端を描くプロローグ。
子役たちがみな上手なのもあって、世界観へと一気に引き込まれる。
感情の機微を巧みに表していて、多感な時期ならではの友人との距離感を見事に表現している。
部活仲間とのからかいの中でほつれのようなものが見え隠れし、“何かが起こってしまうんだろうな”と予感させる展開。
そして…

その後、シーンが切り替わり大人になった彼らが描かれていく。
疎遠になったアキラ(大東駿介)とハル(高良健吾)とサク(石田卓也)の3人が再開することにより、止まっていた時間が動き出す。

ハルのなくなってしまった選択肢、失なわれた道。
その苦悩が一番共感できるものだった。
アキラとハルが橋の上で言葉をかわした時の雪解け感など、ずっと待っていた瞬間の熱さに気持ちが凝縮されていく。
必要なのはたった一言だったんだよね。

“孤独と怒り”を内面に抱え、必死で生きてきたハルの姿にグッとくるものがあり、それを体現した高良健吾が凛としていて本当にカッコ良かった。
痺れるラストの選択と描写も切れ味抜群。
詳細については触れられないけど、納得感を得るには十分すぎる結末。
エピローグとプロローグのコントラストが対比的なのも秀逸。

罪悪感と嫌悪感
一つの言葉、一つの行動、間違ったことを謝り、相手の行いに感謝をすること。
人として当たり前に必要な根の部分、いくつになっても忘れちゃいけないものを思い出させてくれた。
やり直しができるうちに。

役者陣について少し触れると、高良健吾は珠玉そのもの、大東駿介もしっかり存在感を示している。
椎名桔平は役柄がピタッとはまり、佐藤浩市の使い方が贅沢だ。
キャリア豊富な役者陣と良質な脚本によるバランス感覚の優れた作品。
こうした邦画がもっと増えてほしいなぁと思わせてくれる素晴らしい作品でした。
ハル

ハル