叡福寺清子

ニューヨーク・オールド・アパートメントの叡福寺清子のレビュー・感想・評価

3.7
ペルー人の母ラファエラさんとポールとティト兄弟は不法移民.ラファエラさんはダイナーで働き,兄弟は英語教室に通いつつ中華料理のデリバリーバイトに勤しみます.爪に火を灯すような生活が続く中,ラファエラさんはエロ小説家の白人男性といい仲に,兄弟は兄弟で語学教室にてクロアチア女性のクリスティンさんと知り合います.人種の坩堝たるNYで5人(エロ小説家はおまけ)の生き模様を描いたのが本作でした.こんばんわ.三遊亭呼延灼です.

移民達の青春白書みたいな物語かと思ったら,意外と生臭いお話でちょっくら吃驚しました.ラファエラさんはエロ小説家の無謀な計画,ブリトー屋を無免許で出店しますが,そもそもブリトーはペルー料理じゃございません.食材管理も杜撰で気づけば鶏肉に蛆が湧く始末.さらには食肉運搬車に紛れて違法入国した時のトラウマが蘇るし,当然儲けなんて微々たるもんです.

兄弟が知り合ったクリスティンさんは,恋人である受刑者の弁護士費用捻出の為に高級売春婦として働きます.そんなある日,恋人が出所するとの連絡が入りますが・・・

そしてポールとティトの兄弟.二人がバイトしているのが中華レストラン.ニューヨークで,中国人が経営するレストランで,ペルー人がデリバリーする.他人種国家とはこーゆーものかと,見せつけられましたが,と同時に不法移民がいくら足掻いたところで日の目を見る生活が来るわけでもなく,ただただ目先の事柄に追われる日々.当然不法移民であることがバレたら強制送還だし,そもそもちゃんとした職に就けるわけもない.それでも夢を見てしまう.突きつけられる現実.そんな生活の中,小さな灯火に見えたクリスティンさんでしたが・・・

呼延灼は本邦が移民政策を執る事には断固反対の立場でありますが,個々人がどうのこうのという立場にはございません(某二国人を除いて).ですが,本作の有り様を観て,本当に移民が幸福な生活を,そして自国民と共存できるのか今一度考える機会になったと感じます.まぁ結論は変わらんのですけどね.
とはいえ,事故っといて「車が傷ついちゃったじゃない!」とキレた女性は殴っていいと思いますよ.