Jun潤

ニューヨーク・オールド・アパートメントのJun潤のレビュー・感想・評価

3.7
2024.01.27

予告を見て気になった作品。

ニューヨークにある古びたアパートの一室。
ラファエラはポールとティトを探してその部屋を訪れていた。
ポールとティトは、その部屋で暮らしていた頃を追想する。
ブリトーの配達員として働きながら英語学校に通っていたポールとティトは、同じ教室に通うクリスティンに一目惚れし、交流を始める。
3人は皆、そこにいるはずなのに“いない”透明人間として、自分の居場所を求めていた。

これはまた新しい形のジュブナイルストーリーが生まれましたね。
違法入国や売春など、イリーガル故に誰にも認知されない3人の少年少女が、愛を知らないが故に愛を求め、求めてしまったが故に破滅へと向かっていく。
しかし愛を得たポールとティトはもう透明などではなく本当の愛を知っている、苦味がありつつも救いのある終わり方だったと思います。

ストーリーの大枠としては、ポールとティトを探すラファエラの視点から描く現代パートと、ポールとティト、クリスティンの視点から描かれる過去パートが、オーバーラップしながらポールとティトの身に何が起きたのかを解きほぐしていく流れ。
ポール達を取り巻く状況が状況だけに、どんでん返しというほどではないものの、透明人間だからこそ足りないものを補い合っていた3人を迎えた結末には切なさが溢れていました。

登場人物それぞれが求めていた愛の形に、純愛と呼べるものはなかったかもしれませんが、自分自身のために誰かを愛し、誰かに愛されたいと願う気持ちに大人も子供も関係なく、透明だからこそ、周囲の意見に左右されず自分の気持ちを貫き通す強さも描かれていたんじゃないかと思います。
Jun潤

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