湾岸に住むランナー

ニューヨーク・オールド・アパートメントの湾岸に住むランナーのレビュー・感想・評価

4.0
 主人公は、双子のティーンエイジャーの男の子とその母親。ペルーからの不法移民である。ニューヨークあたりには、世界中からこのような人たちが集まって来るのだろう。見つかれば、即強制送還。双子が言うように『透明人間』になって、過酷な環境下で生きるしかない。
 このような人たちが幸せな結末を迎える可能性は、いかほどあるのだろうか。
 双子がクリスティンとニューヨークを散策するシーンが好きだ。人はいかなる時も恋はできるのだ。それが素晴らしいし、切ない。
 母親が明るい未来を夢見て働いているシーンも良い。希望があれば、人は生きていけるのだ。
 そういう懸命に生きている人を食い物にする奴は、ゲス野郎だ。この映画には、三人のゲス野郎が登場するが、まず一人目は、母親に店の経営を持ちかけた奴。後からは、アジア系の女性を連れていたが、要するに自分が優位に立てるマイノリティーの女性しか相手にできないクズである。二人目は、双子やクリスティンが通う英会話スクールの講師。ビール?飲みながら熱のない授業を展開するだけ。彼にとって、ここでの授業は単なる飯の種でしかない。教える喜びなぞ味わったこともないクズなのだろう。三人目は、レストランの場面のクリスティンの客。これは説明するまでもない。あ、もう一人、クリスティンをふった奴がいたか…。いずれもくそ野郎だ。私にも差別心はあるにちがいない。えらそうなことは言えない。しかし、コイツらのようにはなるまい。
 ラストシーンについて。ペルーの田舎って、こんな感じ?想像を絶する。あそこから、母親が待つニューヨークまでどれくらいかかるのだろうか。前途は厳しい。しかし、見よ。道は細く、険しい山も聳えているが、とりあえす道は繋がっているではないか。普通だったら、無理だと絶望しそうな状況だか、この双子は幼い頃から苛酷さには慣れていて、良い意味で鈍い。倒れない限りは、諦めることなく進み続けるだろう。隘路ではあるが、どこかに、どこにでも道は繋がっている……そう思いたい。