矢野竜子

青春の矢野竜子のレビュー・感想・評価

青春(2023年製作の映画)
4.0
労働に勤しむ人々のミシンの手捌きが美しくて
そこに監督はまず映画を見たのではないか。
時に被写体になる人々が
カメラを意識する場面もあるが
ほとんどカメラは透明人間の視点のような、
そこにただいるものの視点を得ていて凄まじい。
何気ない小っ恥ずかしいじゃれあいの
数々はカメラを通して
中々見れるものではないだろう。
階段で男に対して強気に出る女の子の
やり取りは段取りでもあるのかというぐらいに
物を投げたりする所作やタイミングが素晴らしく
なんだこれとなる他、
労働者なめの激怒する社長のアングルなど
映画がいきなり立ち上がる感覚にやられる。
カメラが被写体が移動する際に
被写体を追いかけるか、
はたまたそこに留まるか
という選択においてもその感覚がある。
正直長すぎるけれどその平坦な220分は
突然映画が立ち上がっては消えていく感覚を
味わうには必要なのかもと思った。
ただ改めて労働はクソでしかないです。