すえ

青春のすえのレビュー・感想・評価

青春(2023年製作の映画)
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記録

前日が多忙で朝まで動いていたせいで、襲い来る眠気にところどころ敗北し微睡んでしまった、反省。

フィクションとドキュメンタリーを大別すべきではないと思いつつも、やはり両者は別物なんじゃないかとも思ってしまう。映画という形態をとる以上絶対の真実は宿らないのは変わらないが、今作における労働者の労働スピード、これは最も真実に接近している。長く苦しい経験の上に積み重なったそれは、たとえどれほどモンタージュされようと嘘にはならない。

知らないことを知るという映画的欲望が満たされる、ただそれだけのことだがそれでいい。

カメラが圧倒的存在感を放っているはずなのに、どこか不在性を感じる。明らかに労働者と視点を共有している、さながら登場人物の1人であるかのように振る舞う。果てしなく理性的だが、画面はいつだって衝動的で即興的。

とにかく被写体との距離が近い、物理的にも精神的にもこれでもかというほど接近する。どれほど時間をかけて、どれほどの熱量を持っていたかがよく分かる。

パンフレットに記載されている原一男のコメントが素晴らしい。以下。
「ドキュメンタリーは(と言えども)、フィクションであるという考え方=理論が、かなり浸透してきたが、このワン・ビン監督『青春』は見事に、その理論を実証的に描いた傑作である。どういうことか?現実の中国社会は、強大な国家共同体のシステムに組み込まれた民衆にとって自由など見果てぬ夢また夢。ワン・ビン監督はこれまで、同胞たちが、システムの中でもがき苦しんでいる姿を撮り続けてきた。が、そんな民衆たちがいつの日にか楔から解放されて自由に生きる日を夢想し続けてきたに違いないのだ。この『青春』は、そんなワン・ビンにとって、自由闊達に生きる民衆たち、というイメージを現実の民衆、若者たちにカメラを向けながら、ドキュメンタリーの手法を用いて描き出した奇跡のようなフィクションなのである。」

3部構成の構想らしく、今作は第1部。3部全てで9時間を超えるそうな、楽しみ。

2024,99本目(劇場28本目)4/21 第七藝術劇場
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