okimee

青春のokimeeのレビュー・感想・評価

青春(2023年製作の映画)
3.9
上映後に土屋昌明さん(専修大学教授/中国文学・思想史)によるトークショー付き。

3時間半..
8時間超え死霊魂の、ワン・ビンの初の恋愛映画
想定通り、始めの方は寝てしまった....

団地が併設された縫製工場に2014年から5年密着。町全体が子供服の工場地帯となっている。
団地には家族も住んでいるが、出稼ぎに来た若い男女が多い。
給料は出来高制で半年分一括支払い(後払い)
若い男女の関心は、恋愛と賃上げ交渉のこと。
賃上げと、それと対峙する(応える)経営者。この交渉が興味深い。

散々ファストファッションがどんな犠牲の上に成り立ってるか映画で見ているのに、安物の服をきて見ているわたし。
少しショックだったのは、もっと綺麗な工場で、もっと丁寧に作られてると思い違いしていたこと。ソーイングビーのような裁縫をしているとでも思っていたのか。

「売れない」という経営者に対し、はっきりと「給料と商売はべつ。」と言い放つ女性。

「カメラまだついてくる。撮ってるわよ。」

----以下、トークより----
・続きがありそう。彼らの生活ぜんぶを撮ろうとしているのでは。
・天安門の頃(90年代)の若者の雰囲気と同じ。90年代〜30年間、中国の若者はこんな感じ。人間関係が密着していて明るく底抜けで、戯れている感じ。
・ワンビン監督は直感的に「これだ」と思ったのを撮影する監督。
・監督にとってはこの場所は違う雰囲気でもある。西安市の出身で乾燥した地域だが、この土地は水郷地域。ワンビンからすると憧れの場所だったのでは?
・同じ地域の出身で同じ場所で働いているので、あれだけ固まっている。同じ出身だと独自の言葉で話しているが、違う場所からも出稼ぎに来ていて、その人と話すときは共通語。色んな人が集まって共同生活している。
・監督は特定の誰かを主人公にすえるのではなく、誰か1人に注目したら、また次の人に注目する。そのなかで脇に先程注目した人がでてくる。水滸伝や三国志など古い小説の流れを汲んでいるのでは。
・ワンビンは、14歳の時に父親が亡くなった。中国の当時の政策として、こどものときに父親がなくなったら父親の職を継いでいい、というものがあり、父親の職を継いだ。その大人だらけの職場の中に写真好きの人がいて、それをきっかけに芸術大学に入り、国外の映画に触れた。始めの作品を撮るまではワイズマンなどに触れてなかったと思うので、中国の古来の考え方などから独創的なスケールの大きいものをつくっている。
・死霊魂は、100人くらいインタビューをしているが、20人くらいしか出てこない。死霊魂のような壮大なプロジェクトを考えていて、それと同時にこのような映画も撮っている。
・彼は無くなっていくもの、を撮ろうとしているのでは。コロナになってこの工場の彼らはどうなっているのか、、現金支給もこの工場経営の仕方もあの地域特有の特殊なやり方で、現在はもう既に変わっているだろう。
この映画にうつっているもので「中国はこう」と全体として考えてしまってはいけない。「無くなってしまうかも」というものを記録しておかなければならない、ということで撮影していると思う。
・1/3は前田さんが撮影したが、大体は監督自身。20年の世界的巨匠が撮影している、という感じがしない。
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