horahuki

ファミリー・ディナーのhorahukiのレビュー・感想・評価

ファミリー・ディナー(2022年製作の映画)
3.5
記録です。

ボロカス評価だからスルーしてたのだけど、意外と面白かった。いわゆるスローバーン系。『ミッドサマー』とか『ウィッカーマン』の呪縛に囚われまくった作風の中で、極端なダイエットへの傾倒を信仰とまで言い切った現代的な要素を付加した作品。

ダイエットのためにカリスマ料理研究家だった叔母の家までやって来たおデブちゃんの主人公が、その家族の不穏な雰囲気の中で絶食ダイエット手法に洗脳され邪教に絡め取られていく。あくまでも自由意志を尊重している(素振りをする)のが現代的で、強権的な一面とのアメムチ戦法を味付けなしに提供し、相手方の正常バイアスを働かせることで自由意志を誤認させる。『ウィッカーマン』なアレとか毎度の如く使われるサトゥルヌスでどうなるかは早いうちに提示され、その定まったゴールに向かって愚直に進んでいくところに面白さは生まれないながらも、料理が頻繁に登場する飯テロ感と、食に対する先鋭化し過ぎた「潔癖」を宗教(邪教)化する発想が面白く、対抗馬として添加物盛り盛りな食事でもって過保護親vs ザ・思春期な反抗期キッズのモチーフとして利用している時代性を反映させた茶化しが好き。

中でも、好きなもののみで体を構成する同化願望とまで「食の潔癖」を貶めるのが思想強くて堪んない!ダイエット動機がその食の潔癖へと接近することで物語が推進され、「潔癖」と「あるがまま」の二項対立の中での葛藤を潔癖との決別&欲望の抑制というダイエット的にまともな落とし所にもっていくバランス感覚が何というかズルくて笑ってしまった。

地味に食欲と性欲をリンクさせ、その葛藤も結構ガッツリと仕込み、ラストシーンに色をつけてるのも良かったし、そもそもの2人それぞれの動機的なところもラストで答え合わせさせているわけだし、真面目すぎるのがアレではあるけど、綺麗な構成だとは思った。二度ある「家族」を通り過ぎていくカメラが本作の主意表明であるし、うさぎの反復を裏切る形で意外性を上乗せするだけに留まらず、トドメを刺しに来たあの時の自分に対する決別の意図まで乗せているあたりも丁寧な感じがする。


コメント等スルーしてください🙏
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