好き勝手なてそ

ファミリー・ディナーの好き勝手なてそのレビュー・感想・評価

ファミリー・ディナー(2022年製作の映画)
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■あらすじ
自分の体型に悩んでいたシミーは、伯母でありダイエット食でかつて自著がヒットしたクラウディア宅を訪れる。
敬虔な信者であるクラウディアは、イースターの数日前から断食をしている最中だったが、シミーからダイエットしたいことを告げられるとシミーにも断食生活をさせることに。
極限の空腹状態で迎えたイースターとはーーという話。

うさぎを狩って処理するシーンあり。しかしエンドロールでは「動物に危害を加えていません」の文字あり。
つまりレプリカ?本当か疑うくらいかなりリアル。

■ざっくり感想
雰囲気的にはやはりラムとかイノセンツあたりの北欧のホラーの雰囲気があった。彩度低めの色合いと、じわーっと気持ち悪い状況が続く。

色んなホラー映画の要素を組み合わせており、真ん中くらいまでは何系で来るのか読めず、サイコホラーやスプラッター展開もあるかなと思っていたが…。
真ん中あたりになると展開がわかってしまうのが残念。このストーリー展開に気づかないの、むしろ主人公のシミーだけじゃないか…?

面白かったけど、先がかなり読めちゃったのと、いろんな要素ちりばめたわりにシミーがぽちゃぽちゃなのがうまく使われてない気がしてもったいないという感情が勝った。
ストーリー的に気になった部分は下記に記載します。


ーー以下ネタバレ含みますーー

■シミーが石の首飾りに触る理由
食欲を抑えるために効くと渡された石の首飾り。
冷蔵庫を開けるシーンなどで見られていたが、他にもシュテファンを刺す前やラストシーンなどでも首飾りに触れており、食欲とどう結びついていたのかよくわからなかった。あらゆる欲を抑制するという意味だとすると、その後に刃物で刺したりする行動は矛盾するので、
食欲を何か別のパワーに転換するのかな?とも思った。


■シミーへのダイエットに対するフィリップの反応
フィリップはわざわざ嫌なやつを演じていたというより、彼自身が孤独な戦いをずっとしてきていて、誰も味方がいないと思い続けて捻くれた結果なので、シミーについて「モテないだろ」と言ったのは本心だと思う。
しかし後半になると、「身体は自然な方がいいのでは」と言い出す。まるでシュテファンと同じようようなセリフで、捕食する側みたいで不思議だった。(そのくせに食べられたし)
あれは本当にフィリップだったのか…?

■クラウディアがフィリップを食べる理由
クラウディアが食文化を研究していることや、イースターの食事であることと、フィリップを食べることに果たしてどんな関連があるのかがいまいちわからなかった。
想像できる範囲だと、クラウディアは毎日スマホをチェックするほどのものすごい支配欲の強い人物なので、
学校でフィリップが問題を起こしたなどの事実があるのだとすれば、愛する子供だからこそ自分の血肉として生かしつつも自分の気にそぐわない行動は封じられると思っていたのかなと思った。
ブードゥー人形を地中に埋めているシーンがあったが、あれで行動も抑制していたかもしれない。
カニバリズムについて色々調べると、宗教的な意味合いでのカニバリズムの場合、豊作や繁栄のための行事として生贄として差し出しつつ食する必要があった…とか、身体に取り入れることで同化できるという考え方がやはりあるらしい。

■最初からフィリップが食べられる予定だったか
シミーが食べられそうな流れをどうしても想像してしまうが、当初イースター後の月曜日までシミーは滞在したかったがクラウディアに金曜日で帰ってほしいと伝えられたので、さすがに最初からフィリップが食べられる運命だったと思う。
しかしなぜ何年も寝かせて今年だったんだろう?
また、フィリップだけ食事を与えられていた理由も気になる。支配欲の強いクラウディアなので、シュテファン同様自分の宗教観念をフィリップに押し付けそうなのに…。
それとも、愛しているように見せて、本心はもう食用としか見てないから、ストレスをかけさせないように食べたいものを食べさせたのかな?
クラウディアの低糖質推しの本が見つかるシーンもあるが、フィリップが朝食で出された粉糖クリーム乗せのパンケーキをおいしいと口に出してバクバク食べるシーンもあり、わざわざ信念と外れる食事を与えていたのは何か意味があったと思う。
シミーのお菓子の袋を枕元に置いたシーンも、きっと実際に食べているだろうしフィリップは甘いものが実は好きなんだと思う。

■フィリップはどこまで逃げたのか
フィリップは自身が逃げられないと思っていて、そのセリフの通りウィーンへの逃亡は失敗し肉にされてしまう。
フィリップは一度藁を積み上げたところ(イースターファイヤーという文化がドイツ近辺ではは実際にあるらしい)まで逃げていて連れ戻されるが、ブードゥー人形を埋めてからは鍵を壊したものの逃走範囲を制限された可能性もありそう。
(直前にたまたま見ていた映画「スペル」では、塩を境界として利用していたりもしていた)


考えれば考えるほど気になるシーンが多い…。そういった意味で考察しがいはあるかもしれない。