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物体 -妻が哲学ゾンビになった-のakのレビュー・感想・評価

3.8
まず亜居役の門田さんがとてもチャーミングで、終始見入ってしまった。
なんて可愛い人なんだ。。
一つ一つのお芝居が、監督の吟味と確かな創造性で紡がれた演出だと感じて、信頼しながら見る事のできる映画だったのが素晴らしい。
悲しいとこんな顔、とか、怒るとこういう顔になるよね、とか、そういうテンプレ的なお芝居が一つもなくて、役者と監督と現場の空気で生まれたものなんだろうなあと。
特にお気に入りは、亜居を施設に入れるように促してくる謎の組織のおじさんで、あんな感じの角の取れた優しい佇まいでキツイことを言うベテランの営業マンっているよなあと納得してしまった。
シーンの終わりと始まりを、言葉や物の同音意義で繋ぐのも気持ち良かったり気持ち悪かったりして、この映画のリズムは本当に、作り手によってコントロールされているのが心地良く、最後まで終わらないでくれ!と思いながら見続けられた。
自分の妻は哲学ゾンビになってしまったけど、まだなったばかりの赤ちゃんで、これからどうなるかわからないだろ!?まだ成長の余地はある!という夫の主張が胸に刺さったなあ。
自分自身の年齢からして、
そう遠くない未来に、歳を取った家族の誰かがアルツハイマーや認知症になったとしたらどんな風に向き合ったら良いのだろうとたまに考えていたのだが、この映画のように目の前のその人と日々向き合って、小さな変化に一喜一憂したりしたら良いのかな、なんて少し思ったりした。
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