百合ちゃん

ライラの冒険 黄金の羅針盤の百合ちゃんのレビュー・感想・評価

3.4
ハリーポッターと人気を二分するかなり骨太なイギリス児童文学の映画化。児童書ではじめてウィットブレッド賞を受賞して児童文学のあたらしい古典となっている。

子どものダイモンは形が不安定、魔女はダイモンと離れることができるけど人間はできない、などのファンタジーならではの設定→『子ども』のメタファーだったり『人間とは何か』などの作者の物事の本質を捉える力や健全なモラルが表れている。

ジプシャンや魔女、アームドベアやダイモンなど独創性あふれるキャラクターたちの登場→ 自分とは違う種族や動物と言葉が交わせる 交流できるというものはファンタジーならではの設定。自分とは違う価値観や容姿をもつものとの交流によって『自分とは何か』そして『人間とは何か』と、自分自身そして人間自体を見つめることができる。それと同時に自分とは違う他者を平等に向き合い受け入れることで『心の柔軟性』を高めることができると思う。

世界を切り開くのは少女!セクシュアリティが絡んでこない年齢の少年と少女が力を合わせる。→男の子が世界を切り開く物語が多い中、女の子が主人公の骨太ビルディングスローマンっていうのはやっぱり大きな意味があると思う。そして恋愛関係がない男子と女子の友情が描かれているのも児童文学においてとても重要だよね。こういった健全な現代的価値観が表れているものは子どもたちにたくさん読んでもらいたいな。

他にも、現代人に問いかけるあたらしい死生観だったり、想像力をものすごく刺激する要素だったり、もっと魅力はある。

こんな風にファンタジーは、目に見えない現実的な問題(社会問題であったり人間の心理的な問題であったり)を架空の世界でくるんで膨らませているように思う。

そして、ファンタジーの魅力は色々あるけれど、まずここではない別の世界を想像して心を解放できることはやっぱり大きい。物語の世界に入り、その世界の生き物と言葉を交わして様々なことを経験しながらその物語の中の考え方を自分のものにすることによって、読者のこころは成長できると思う。そして、想像力を現実の世界に取り入れることによって、日常の世界が自分だけの物語になりもっと楽しいものになる。生きることを楽しむ力が湧いてくるのがファンタジーの魅力だ。


(ぶっちゃけ、最初はファンタジー色が強すぎていまいち入り込めず、あんなにファンタジーが大好きだったはずなのにわたし大人になっちゃったのかなとかセンチになってしまったけど笑、やっぱり魔女にアームドベアにジプシャンとか、ハラハラするような戦いは自分の中にいる「こども」が興奮しないわけがなかった!)