マトリョシカ

ノルマル17歳。― わたしたちはADHD ―のマトリョシカのレビュー・感想・評価

3.8
ADHD、9歳の息子を持つ
母親としての鑑賞です。

目には見えない障害と言われる発達障害。
身近ではない人にとっては、
何に困っているのか?
イメージしづらいと思います。

それを映像という目に見える形で、
当事者とその周囲の苦悩を表現された事に、
まずは賞賛と拍手を送りたいです!

一口に発達障害と言っても、
実はすごく複雑な背景があって……

ADHDとASD(自閉症スペクトラム)、
LD(学習障害)
では、それぞれの特性が違うのだけど。
スペクトラムつまり連続帯なので、
微妙に重なり合う事がある。

それに加えて、人間誰しも同じではないので、
個人の環境やら性格もあいまって、
「発達障害というのは、すばりこういう人です」
と言い切る事はできない。
というややこしい事象があります。

ちょっと難しい話かもしれませんが。
そういう背景も含めて、
観る方には知って欲しいです。

だから、発達障害の映像化って、
ものすごいハードが高いんですね。

現代では、発達障害という言葉だけが
一人歩きしてしまい、
往々にして誤解されている面もあると思います。

この映画では、そこもしっかり描かれており、
とても共感できました。

私も、ある人から
「でも、発達障害って
何かひとつ秀でた才能があるんでしょ?」
と言われムカついた経験があります。

健常者の中にも、
天才と凡人がいるのと一緒です。
発達障害だから、
生きていく上での免罪符には、
なりませんから!

こんな事を言うと身も蓋もありませんが、
当事者にとって、
遥かに苦しみが多い障害です。
治るものではないから。
だからなんとか、
上手く付き合っていくしかないんです。
それはこの映画を観たらわかると思います。

この映画で少しでも
色々な人の理解が進めばいい
と願わずにはいられません。

本人も苦しんでいますが、
周囲の家族も相当にシンドイです。
私自身、毎日手探りで暗いトンネルの
中を歩いているようなものです。

この映画を観た方の中には、
「なんて理解のない家族なんだろう」
と思う方もいるかもしれませんが、
(価値観という言葉が
一番近いかもなのであえて使います)
全く違った価値観・視点を持った人間同士が
毎日一緒に顔を合わせて生活していくのです。
衝突が起きないわけがありません。
毎日が葛藤です。

それでも、試行錯誤しながら、
なんとか順応の道を探していくしかありません。

だから、一筋の光を信じて。
最後に、好きな言葉を添えます。

『発達障害児も発達する』。