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グレムリンのatomaのレビュー・感想・評価

グレムリン(1984年製作の映画)
3.5
ギズモの可愛さで釣ってグチャグチャしたモンスターホラーを見せてやろう、という意地悪映画。でも、映画の中のギズモを改めて見ると、目がギョロっとした鼻の潰れた生き物で、あまり可愛いくない。と思う。

モチーフとなったグレムリンは、主に機械に悪戯する比較的新しい妖精伝承(トリビア:ダン・オバノンは『エイリアン』にたどり着くまでにグレムリン伝説をモチーフに採った脚本を構想していたらしい)。
本作の増殖するアニマトロニクス・グレムリンたちも、やっていることは基本的に悪戯でモンスターとしての一貫した意志がないので、パニックとしてもホラーとしてもあまり怖くはないし、ディーグル夫人以外では死人も出ない。そのへん、あくまでファミリー向け映画と感じる。

そんななか、「ファミリー向け」の域をはみ出している数少ないシーンが、「こんなに後味の悪いエピソード必要か?」と誰もが感じるケイトのパパの件と、映画のラスト、偉大なるクリス・ウェイラス(『ザ・フライ』、『レイダース/失われたアーク』など)による特殊効果で陽の光を浴びて消滅するグレムリンだろう。
その他、ダーレン・ラヴ『Christmas (Baby Please Come Home)』が流れる最高のオープニング、ビリーのママが包丁、電子レンジ、カスみたいなパパの発明を武器にして演じるグレムリンとの大立ち回り(『エイリアン』のリプリー風)などは印象的に残る。

クリスマスを舞台にした映画ではあるものの、クリスマス精神みたいなものはあまり感じなかった。ディーグル夫人やフターマンさんなんか、スクルージあるいは『ホーム・アローン』のマーリーさんみたいな顛末があっても良さそうなものだが(本作は脚本がクリス・コロンバス)。

最後に本作の映画レファレンスをメモ。
ビリーの母がキッチンで見ているのは『素晴らしき哉、人生』、ギズモがベッドの上で見ているのは『スピード王』、グレムリンの蛹化が起こる直前にビリーたちが寝落ちしながら見ているのが『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』、ハンソン先生が襲われる直前に映写されている科学ドキュメンタリーは『Hemo The Magnificent』(監督はキャプラらしい)、そして世界一治安の悪い映画館でグレムリンたちが観ているのが『白雪姫』(このシーンの顛末、だいたい『イングロリアス・バスターズ』)。(2024/4/7)
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