おこのみやき

タカラヅカ・レビュー・シネマ 星組公演「1789 バスティーユの恋人たち」リミテッド上映のおこのみやきのレビュー・感想・評価

4.1
舞台挨拶付きフィナーレ上映を鑑賞。

昨今のチケット難や公演中止の多さを考えれば、映画館で鑑賞できるのはありがたい。
別段贔屓がいない組であればオペラを上げる必要もないし、カメラは主要キャストを追ってくれるのでストーリーもすんなり入ってくる、セリフや歌声も綺麗に聞こえる。Dolby Cinemaの可能性は十分だと感じた。

さて、内容の話。
この演目はヅカに合っているのか否か。
原作からどれくらい変更を加えているのか分からないが、豪華な衣装やセット、そして歴史的事実(今回はフランス革命)を劇的に描いた点でヅカの演目としては王道を行っている。

一方、キャスティングには苦労が見える。前回の月組公演ではトップ娘役(愛希れいか)がマリー・アントワネットを演じたのに対し、今回のトップ娘役(舞空瞳)は主人公ロナンの恋人となるオランプを演じている。アントワネットを演じるのは本公演で退団となる有沙瞳。
主人公つまりトップの相手役を演じるのはトップ娘役が望ましいという暗黙の了解みたいなものが存在するが、アントワネットの存在感や出番を鑑みるとそちらをトップ娘役が演じるというのも理にかなっている。いずれにせよ今回、若々しさ、可愛らしさのある舞空をオランプに当てたのは賢明な判断だったと思われる。

それにしても有沙瞳の芯のある演技は強く印象に残る。アントワネットの少女的な部分と死へと向かう哀愁を歌声で上手く表現していた。娘役では他に小桜ほのかが存在感を見せていた。いつもの高音美声を封印したのか、力強い歌声と演技を見せ、庶民としての姿を体現していた。

男役では極美慎演じるロベスピエール。思っていたよりも歌唱が多く、暁千星、天華えまと共に革命へと進むさまを表現。ロベスピエールについてはその後また独裁政治に進むことから、それも意識しつつ演技したそう。天飛華音演じるフェルゼンもすばらしい。セリフは多くないが、立ち居振る舞いになんとなく貫禄がある。まだ研8という驚き。

そして、礼真琴。伸びやかな歌声はDolbyだとより鮮明に聴こえる。銀橋でのオランプとの逃亡の場面では、手の甲の血管がキラキラしていた。監獄の場面では本当に鞭に打たれているのではという演技力。今日もRRRで鞭に打たれているのだろうか...

物語としては、ラストの唐突さにもう少し余韻が欲しいところだが、それをカバーするロック調楽曲の良さ、群舞の良さで、さすがパッションの星組であった。

しかし、終演後の瀬央ゆりあおもしろトークでいろいろ記憶が消えてしまった感は否めない。瀬央さんありがとう。