亘さん

ジョン・バティステ:アメリカン・シンフォニーの亘さんのレビュー・感想・評価

4.5
ピアノのイントロの1音めで誰が弾いているのか分かるアーティストは数少ない。ジョン・バティステの大きな手から奏でられるピアノの音はとにかく優しい。オーガニックで温かさを感じる、その人は一体どんな人なんだろうと思ってたけど、改めて彼の類いまれな才能を強く知る事になった。才能だけではなく、ジョンの人柄や苦悩まで密着したドキュメント作品だった。

コロナ禍で分断された世界をそれぞれの音を集めて一つの世界を表現しようとする試み「アメリカン・シンフォニー」の創作と、彼の妻であるミュージシャンで作家のスレイヤ・ジャワードの闘病が交互に挟まれる。白血病を患い、一度は寛解し再発した妻を支えるジョン。精神的にかなり辛い状況でも、だからなのか、精力的に音楽を作り出している。
自分の中に溢れる何かの全てを表現したくてもがいているようにも見えるけど、その真摯な向き合い方に感動する。何を表現したいのかが明確で的確にアウトプットする、これこそが真のアーティストだなと思った。エグセクティブ・プロデューサーにオバマ夫妻が名を連ねているのも納得。本当に素晴らしいドキュメントだった。
亘さん

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