てっぺい

陰陽師0のてっぺいのレビュー・感想・評価

陰陽師0(2024年製作の映画)
3.5
【ゼロ映画】
世界が認めたVFXチームの映像美は、期待の裏切り度ゼロ。バディ感に心温まり、実在した陰陽師の凄みを音や映像だけでなく構成で描く巧みさはガッカリ感ゼロ。

◆トリビア
○ スタジオやロケ地のあちこちで、呪文や印の練習に明け暮れていたという山崎賢人。指を柔軟に曲げるため、指の骨の間に鍼を打って撮影に臨んだという。(https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/production-note/)
○ 10本の指とそれぞれの関節の組み合わせに意味がある印。呪文を唱えながらスムーズに印を組み換えていく動作は相当な難易度で、監修の加門七海は「山﨑賢人さんには手加減なしで教えましたが、本当に努力家。舌を噛みそうな呪文も頑張って覚えてくださって素晴らしかったです」と語る。(https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/production-note/)
○博雅を演じるにあたって核に据えていたのは、クライマックスで晴明からかけられる「お前はいい男だな」という言葉だという染谷将太。どんな博雅であったら晴明にそう言わせることができるのか、常に意識していたそうで、ワークショップ形式で、二人で役を入れ替えて演じるなどして、互いの役を探り合ったという。(https://bunshun.jp/articles/-/70145?page=3)
○ 山﨑は、本作撮影後の『ゴールデンカムイ』での体重増のため、ゆで卵とプロテインの生活。染谷は『サンクチュアリ 聖域』の体重10キロ増の直後の本作で、体重減に苦労したという。(https://eiga.com/news/20240419/22/)
○ 徽子女王が博雅に大切な一言を伝えるシーンでは、博雅のあまりの優しい表情に勝手に涙が出て何度もテイクを重ねたという奈緒。「何回かテイクを重ねる中で、今まで徽子が一人で抱えていた思いを理解できましたし、たどり着けた気持ちが生まれたのだと思っています。」(https://book.asahi.com/article/15230051)
〇VFXには白組(第96回アカデミー賞視覚効果賞受賞「ゴジラ -1.0」の製作・VFXプロダクションを担当)を中心に数多くのクリエイターたちが参加。平安時代の再現と龍や大樹に飲みこまれるシーンでのエンタメとしてのVFXに力を入れたという。(https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/production-note/)
○アクションシーンは、浮遊感が相応しいとの事で、羽生結弦にインスピレーションを得て作られた。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/陰陽師0)
○現代に通じるよう“フェイクニュース”をテーマのひとつにしたという佐藤監督。「人が作ったストーリーを信じ込んでしまう。みんなが“呪”にかかる話にしようと考えました。」(https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/production-note/)
○ 原作では当初、博雅を武士として書いていたが、当時の資料を読み込んだ佐藤監督が貴族だと指摘。本作では貴族の博雅が描かれる。(https://news.mynavi.jp/article/20240214-onmyoji0/)
○ 監督は、製作において困難を極めたのが陰陽寮であったという。平安時代の建物に寺社仏閣以外は残されておらず、「さらに夢の中にまで範囲が広がったため、ゼロから作り上げるのにとても苦労した」と語る。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/陰陽師0)
○ 劇中に登場する6つの呪について呪文、印、御札を考案した、呪術監修の作家・加門七海。「古文書や、現在も使われている中国道教の呪文や印などを参考に呪を考えました」という加門は、クライマックスの神を呼ぶ呪など、万が一のことが起こらないよう、あえてフェイクを加えたと話す。(https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/production-note/)
〇晴明の青い狩衣には、晴明と縁がある高野山・奥之院の霊木から作った生地を使っており、森羅万象を司る陰陽師にふさわしい衣装となっている。(https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/production-note/)
〇監督は、プロになる前から原作者と30年来の知り合いで、当時口約束程度だった夢枕作品の映像化がようやく本作でかなったという。(https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/production-note/)
○監督は「アイデアはたくさんあるので、シリーズで10本くらい撮りたいですよね。今後もぜひ、期待してください(笑)」と次作へのアイデアが豊富にある事を明かしている。(https://bunshun.jp/articles/-/69940?page=4)
○ 源博雅は雅楽家としての功績も多く、現存する最古の笛譜「長慶子」は博雅作。(https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/production-note/)

◆概要
【原作】
夢枕獏「陰陽師」(1988年刊行・シリーズ累計発行部数680万部超。本作は夢枕の全面協力の元、完全オリジナルストーリーとして描いている)
【脚本・監督】
「アンフェア」シリーズ 佐藤嗣麻子
【出演】
山崎賢人、染谷将太、奈緒、安藤政信、村上虹郎、板垣李光人、國村隼、北村一輝、小林薫
【呪術監修】
「呪術廻戦」考察で知られる作家・加門七海
【主題歌】BUMP OF CHICKEN「邂逅」
【公開】2024年4月19日
【上映時間】113分

◆ストーリー
呪いや祟りから都を守る陰陽師の学び舎であり行政機関でもある「陰陽寮」が政治の中心となっていた平安時代。青年・安倍晴明は天才と呼ばれるほどの呪術の才能をもっていたが、陰陽師になる意欲も興味もない人嫌いの変わり者だった。ある日、彼は貴族の源博雅から、皇族の徽子女王を襲う怪奇現象の解明を頼まれる。衝突しながらもともに真相を追う晴明と博雅は、ある若者が変死したことをきっかけに、平安京をも巻き込む凶悪な陰謀に巻き込まれていく。


◆以下ネタバレ


◆事実と真実
晴明の“意識”の世界の描写から始まる冒頭。振り返ればこの“意識”、本作では事実に反する“真実”と呼ぶこの世界が物語の大きなキーとなることがここに記されていた。この“真実”を晴明は時に操り(カエルを爆破するのは第1作の蝶へのオマージュか)、時に翻弄され、両親を殺めた黒幕の亡霊に苛まれる。博雅は“死ぬ方がマシだ”と叫ぶほど、吹笛という心の拠り所を失う恐怖に苛まれながらも、徽子と心を通わせることで“真実”に逆に救われる。そんな、事実と真実を“呪”を通して行き来する事がベースとなった本作。その中で、“事実”の世界で水龍や大樹の根という呪を放つ、つまり呪をマジックではなく超能力として使う晴明が、陰陽師達を超越した存在として描かれており、映像や音だけでなく構成としても巧みに効いていたと思う。

◆VFX
「ゴジラ -1.0」が世界に認められたことで、白組がVFXを担うのなら否が応にも注目してしまうこの部分。冒頭の金の龍に始まり、貞文らが炎に包まれ火の龍と化す描写も迫力が見事。その火の龍に囲まれた晴明が放つ水の龍(嶋田久作扮する博士が学生に説いていた、森羅万象の始まりと終わりが水だというくだりが効いていた)は、火の龍を蹴散らし昇天するだけでなく、黒幕の是邦を捕えるというあの一連も見もの。博雅と徽子が心を通わせたシーンで次々と景色に咲いた花々もとても美しければ、式神が舞い、大樹が陰陽頭を襲うラストの迫力も素晴らしい。個人的には、晴明が森の空間を切り裂いて都に移ったシーンも印象的だった。

◆バディ
本作の明らかな一本筋だった晴明と博雅のバディ感。はじめの出会いから(カエルを爆破した晴明を見つめて微笑む染谷将太の表情が絶妙!)、博雅の龍笛で現実に戻り“お前の笛に助けられた”と漏らす晴明(これも第1作へのオマージュ)、火傷を負った博雅を必死に守る晴明も胸熱。ラストで晴明からかけられる「お前はいい男だな」がどれだけ響くかが核と据えて全体を演じたという染谷。酒を酌み交わし語り合う2人の様は、そんな狙いがピシャリとハマるほど、全体的にバディ感が満載。シリーズのどの作品よりも、2人の絆に溢れた心温まるラストだった。

◆関連作品
○「陰陽師」('01)
本作同様夢枕獏原作。野村萬斎がどハマり。プライムビデオレンタル可。
○「陰陽師Ⅱ」('03)
続編。プライムビデオレンタル可。

◆評価(2024年4月19日現在)
Filmarks:★×3.4
Yahoo!検索:★×3.7
映画.com:★×3.5

引用元
https://eiga.com/movie/100612/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/陰陽師0
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