不適合・旅・孤独
「…僕の全てを説明はできない。物語というものは点と点を結んで、最後に何かが現れる絵のようなものだ。僕の物語もそれだ。僕という人間が、ひとつの点から別の点へ移る。だが何も大して変わるわけじゃない……そこからここ、いや、ここからここへの話だ」
ニューヨークにいる、孤独を抱えた高校生がNYの裏路地で様々な人間と出会う話。
冒頭の語りが、この映画、ひいてはジム・ジャームッシュ監督の映画に共通する面白さを示しています。彼の映画では大きな事件や、世界や社会を変える出来事は何も起こりません。個人が大きく変わるわけでもありません。
彼の映画では、登場人物が日常生活の中で関わり、交わり、緩やかに変化らしきものがあるだけです。「ひとつの点から別の点へ移る」だけです。
アリーも、ひとつの点から別の点へ移りました。ただ、彼は孤独を解消もせず、漂流する旅人のままです。状況は変わっていません。彼は「終わりのない休暇」を過ごしていくだけです。
しかし、冒頭のようにそれを嘆いている様子は見えません。そこには人と関わり、緩やかに変化した人間が幻想的に映されています。