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パーマネント・バケーションのsのレビュー・感想・評価

5.0
<ジムジャームッシュ祭りが開催され、念願の映画館にて観れたので、レビュー再投稿>

マイベストムービー。
ジムジャームッシュ作品の中でもダントツで好きというか愛着がすごい。

間違いなく、あの日の映画館のなかで一番この映画が好きだという自信があった。
ていうか映画館で観れたこと、奇跡。
ジムジャームッシュ祭りに感謝。

ちなみに一部でおしゃれ映画扱いされてるようだがジムの作品の中でもおしゃれな方ではないと思うな。
洒落たいけどまったく洒落切れてないのがこの映画。

実は、6年前(当時18〜19歳くらい?)にめっちゃ濃い(濃くてきもい)レビューを書いていて、社会人になった今、改めて映画館で観れたので感想を書こうと思った。

まず、私は大人になったんだと思った。

観る前は、映画館で観れることが嬉しすぎて泣きそうになってたのに、
いざ観はじめるとあっさり観れて、
初めて観た時に痛いほど感じていた、思春期特有のあの理由もなくどこか憂鬱で、心の底の孤独感みたいなものがまるで無かった。

大人になったんだなぁ。。

ちょっと寂しいけど違う感覚でパーマネントバケーションを観れたのでよかった。

前まではチグハグな会話が心地よかったのに、今回はコントを見るように意味不明な会話に笑けてきたり、冷静に意味を考えたりして、中二病臭いアリー(主人公)を、近所の中高生になった少年を見るような目でみていた。

そういうことよね。
私が成長して、アリーと自分を重ねていたのが、他者になったてことよね。

でもよかった。
この歳になってまだ思春期の名残があったら大変ですからね。

とはいえ大好きな映画ということに変わりもないし、映画館で観れたこと、一生の宝物にして生きていきます。

ありがとうございました!!



【↓2015年9月に書いたレビュー】
マイベストムービー

思春期特有のやるせない浮ついた感情がギュッと詰まった一本。


思春期を過ぎ、あの頃の感情を忘れてしまった「おとな」達は『パーマネントバケーション』からは何も見出せないだろうなあ。


人は皆、孤独だ。
誰も自分の全てを理解はできない。

例えば、歩く群衆の真ん中で自分1人だけ立ち止まってみる。
すると、歩く群衆は自分に一切の興味を示さず、絶え間なく流動していく。
まるで自分だけが世界から取り残されたような”孤独”を感じる。

しかし、自分も歩く群衆の流れに沿って歩いてみる。
すると、不思議と一体感のようなものを感じる。
その時は孤独ではないと感じる。
ただ、それは、流れに”沿えば”の話だ。

アリーは沿えられないのだ。

サックス吹きが、”時代に合わない”音で演奏するがゆえ売れないように、
アリーも”時代に合わない”生き方を選び、拭いきれない孤独を抱えて生きる。

それでも自分の生き方に合う場所を探そうと、孤独から逃れようと、永遠の旅に出る。

道中には色んな人がいる。
色んな人が、いる。
けれど、その途中には自分と似た境遇の人間に出会うときが必ずくる。
自分は特別だとか、孤独だとか、狂ってるとか思っていても、似た人間に会うと、それは自分の勝手な思い込みだったと知って、少しガッカリする。
しかし同時に、安心し、なんとなく居場所を見つけたような気持ちになる。
そして、また、心の底では、自分とは似ていても、自分ではなく、やっぱり自分は孤独だとまた感じてしまう。

そして、次の場所に自分を探しに移る。永遠に。

人生はそんな繰り返しなのかもしれない。


ちなみに私が1番好きなシーンは「ドップラー効果」の話。

映画館のソファで黒人のおっちゃんが夢中になって「ドップラー効果」の話をする。
アリーはどこかうわの空で何らたいしたリアクションも見せない。

心が通い合ってないこの二人の異様な空間が妙に可笑しかった。


色あせた雰囲気も、変な音楽も、くすんだ服も、ぜんぶぜんぶ大好きでした。


(そして私もこじらせた思春期少女のうちの一人だということを再確認したのであった)
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