ハル

あとがきのハルのレビュー・感想・評価

あとがき(2024年製作の映画)
4.0
初日舞台挨拶にて。
大好きな下北沢という街で下北沢を舞台にした群像劇を観れる幸せ。
夢に向かい、わかりやすいほど愚直にひたむきに頑張る姿がぐっと来た。
決して美談ではなく、むしろ泥臭く、報われない日々を送るハルタとレオ。

同世代がレールに乗り、正しいとされる人生を送る中で道を外れていく怖さ。
揺れる心情は痛いほどにつき刺さる。
ハルタは役者、レオは音楽。
仕事にできるよう、売れるよう、走り続けるけれど、結果は…

平坦ではない道のりだからこそ、共感ポイントが無数に散りばめられていた。
オーディション→落ちる→バイトのループ。
バイトばかりの生活になっている時にふと頭をよぎる『毎日なにやってんだろう…これは仕事なの?遊びなの?本気って何??』
自問自答の日々と現実のプレッシャーに押しつぶされる時間がリアルで辛い。

「“就職”という道を選ばず、好きなことをやってるんだから自業自得!」
残酷なレッテル、鋭利な言葉で切り刻まれる内情が容易に想像できてしまう。

そうした密度の濃いストーリーとメインの二人以外にも、印象に残った方が。
それはハルタの恋人役を演じた向里祐香。
『福田村事件』や『愛なのに』で好演を見せた彼女は艶があり、深みを感じる透明度の高いお芝居でスクリーンに華を添えている。
良妻賢母な気質、夢を追いかけるハルタに寄り添い、器量ある女性を見事に体現していた。

そして、今作で一番納得感を得られたのはエンディングだ。
葛藤の末の決断、道を違えた二人。
どちらの道も正解であり、間違えかもしれない。
でも、何年か経過した後に抱く「あの時より一歩は進んでいるはず!」という、確信めいたほんのちょっぴりの自信。
手作り感満載、熱いエネルギーを感じさせる等身大な一作でした。

〜舞台挨拶〜
監督と俳優部の三人が登壇し、作品に対する様々な思いを語ってくれました。
クラウドファンディングからスタートして劇場公開まで持ってくるまでの過程を考えると感慨も一入だろうなぁと、気持ちが伝染する。
本作は実話ベース。
ハルタとレオにはモデルがいて、その方々とのエピソードも盛り沢山。
男性役者陣の誠実な姿勢は所作から滲み出ていて、向里祐香さんは今後もっと出演作を見たくなる素敵な人柄の方でした。

『シモキタ - エキマエ - シネマ K2』も良き。
カフェと映画館が一体となった、下北沢らしい映画館。
温かな色合いで彩られた空間、雰囲気も抜群!
お近くにお越しの際はぜひ。
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