人喰いうなぎ

ウディ・ガスリー/わが心のふるさとの人喰いうなぎのレビュー・感想・評価

4.5
何かが動き出したり、何かが決まったり、誰かが何かを目撃したりと言った「瞬間」を描写するのが一般的な劇映画の“感動”“ドラマティック”だとしたらハル・アシュビーは完全に逆を行っている
意地でも「瞬間」を跳ばす

多用されるオーバーラップはカット点と言う「瞬間」を滲ませ曖昧にし、主人公が労働者キャンプでその才能を見せたり、先輩シンガーに認められたり、キャンプで世話になった家族と別れたり、金持ちの女性と関係を持ったり、別れたり、家族が電話を受け取ったり、家族と再会したり、そういう普通なら描くだろう「瞬間」を意地でも画面に出さない

ただ画面に映る圧倒的な埃と圧倒的な電車と圧倒的な乱闘によってアメリカ映画を作りきってしまった
なんたる蛮勇
アルトマンだとこういう語りの脱臼を皮肉を表に出してやってしまうんだけど、ハル・アシュビーはチミノ並みの蛮勇を蛮勇に見せずにやり切っている
圧倒的なド迫力



ちなみに今別の場所でやっているドンシーゲルとは完全に真逆の価値観で出来ているが、なに別に映画の良さは一つじゃない