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遠い一本の道のtsubame737のレビュー・感想・評価

遠い一本の道(1977年製作の映画)
4.2
国労全面協力の映画。
高倉健の海峡や鉄道員が国鉄の光なら、本作は闇。
国労による、国労のための映画にも関わらず、国労組合員の行く末が暗く演出されている。

SLからディーゼル機関車へ。画面の背景にさりげなく時代の変化が写り込む。
主人公の組合員は中堅社員で保線作業の機械化に気持ちがついて行けずに時代に取り残される。
前半と後半で各々、貨車と作業員のシーンが入る。しかし、前半は寄り、後半は引きで撮影されており、近代化で作業員の存在が小さくなった象徴のようだ。

そして、当時の国鉄キャッチコピー「光は西へ」を合言葉に新幹線に乗って、北海道から長崎県に向かう。長崎で見たのは廃墟となった軍艦島。この島の興隆も衰退も国作によるものだった。主人公夫婦は自分達の行く末を軍艦島に重ねる。
国鉄本体からもらった時計を捨て、「帰ろう。北へ。」と言い、国鉄本体と決別する覚悟を決める。
音楽はおどろおどろしく暗く、ラストカットは夕日で二人は黒く潰れて見えない。
その先の未来は恐らく暗い

本作の多くは主人公の主婦の視点で語られる。夫と国鉄本体に翻弄される彼女の視点だから、観客は感情移入できる。
国労の闇の部分の象徴でもある夫の視点だけでは感情移入できなかっただろう。

以下、追記
国労組合員の妻たちの嘆願のシーンでは、当時の最新式のディーゼル機関車が上手から下手に走る。東海道山陽新幹線も上手から下手に走る。一方、国労組合員の息子は貨車に乗って、下手から上手に移動する。
前者の二つは未来の暗示だが、後者は過去の暗示
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