菩薩

遠い一本の道の菩薩のレビュー・感想・評価

遠い一本の道(1977年製作の映画)
3.8
左幸子がこんなゴリゴリの労働映画を撮っていた事に驚く、流石左ってだけある、って書こうと思ったら流石に既出で悔しい。民営化以前であるが機械化、合理化、生産性向上の波で揺れに揺れる国鉄。羽仁進よろしくの半ドキュメンタリータッチで、新幹線開通に湧く世間とは裏腹に三十年働き通してもろくに賃金も上がらず苦境に喘ぐ鉄道マンと家族の悲哀に妻の視点から迫る。組合の運動に精を出せば当然更なる出世の芽は摘まれ、新たに出来た組合との間に内部分裂も発生、鉄道が生活そのものを支える街に暗い影が差す。井川比佐志の性格と言うか人となりがまさに頑固一徹鉄道マンそのもの過ぎて、DV気質なとこなんて「そゆとこだぞ…」としか思えない部分もあるが、誇り高き現場主義の叩き上げの生き様には美しさもある。終盤には「打ち捨てられたもの」の象徴として軍艦島も登場、国の政策により簡単に切り捨てられて者達の叫びを真摯に訴える骨太の作品。
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