オレオ

マイノリティ・リポートのオレオのレビュー・感想・評価

マイノリティ・リポート(2002年製作の映画)
4.0
犯罪者はなぜ犯罪者なのか?
この問は単純に思えて、案外むずかしい。

多くの人はこの問に対して「法律で決まっているから」と法律を引き合いに出すだろう。
しかし、法律も元はと言えば多数派の感情によって作られたものであるから、完璧なものでは決して無い。
そこには明確な基準があるように思えても、法律=ルールとは、実は社会でルールであると認識されるからこそルールたりえるのである。

このように、この世のルールに懐疑的になったとき、その脆弱性、危うさなど、あらゆるマイナス面が浮き彫りになってくる。
本作「マイノリティ・リポート」は、そういったルールの脆い在り方を、近未来的SF世界観によって、うまく映し出している。
内容に踏み込んで言えば、1人のエゴによって、ルールがいかようにもねじ曲げられてしまうような、基盤の弱さである。

この有様は、どこか今日の日本に通ずるところがある。
総理大臣のエゴによって憲法という普遍のルールがねじ曲げられようとしている点においてである。
もちろん、こんなふうに政治と結びつけてこの映画を批評するのは性急であると思うし、論理に飛躍がある。
ただ、考えさせられるテーマであるというのは言うまでもないし、それだけの社会性を孕んだ作品である。

設定パートと事件パートがしっかり描き分けてあるので、内容を咀嚼しながら飽きずに見ることができると思う。
ただ、二転三転していくストーリーにしっかりとついていくのはなかなかむずかしい映画でもある。
何度も見直してこそ、この作品の本質や本当の価値が見えてくるのではないかと思う。
オレオ

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