Jun潤

あまろっくのJun潤のレビュー・感想・評価

あまろっく(2024年製作の映画)
3.6
2024.04.22

江口のりこ×中条あやみ×笑福亭鶴瓶。

兵庫県尼崎市にて家族3人で暮らす近松家。
自分のことを尼崎閘門、通称“尼ロック”だと自称する父のようにはならないと、娘の優子は密かに決意していた。
しかし2015年、周囲の人と上手く関係性を築けていなかった優子はリストラを言い渡され、東京から尼崎に戻ってくる。
そんな優子を父は垂れ幕で迎え入れる。
それから8年、優子は変わらず実家に居続け、そんな日々が続くかに思われた、父が20歳の女性・早希と再婚すると言い出すまでは。
自分と倍近く歳の離れた継母に対して困惑し、上手く接することのできない優子。
優子も自分が今の近松家にとって不要な存在であることをうっすらと感じていた。
しかし、とある雨の日に父が突然亡くなる。
父との思い出に浸る間もなく、早希が持ってきた見合い話の相手・南雲と出会い、急速に距離が近付き、惹かれていく優子。
そして発覚する早希の妊娠と南雲の海外転勤と、優子へのプロポーズ。
揺れ動く優子の心に、父との思い出が蘇るー。

笑って泣けるホームコメディの王道って感じの作品でした。
しかし江口のりこは好きな女優さんですが、中条あやみについてはどうしても好きになれないというか、個人的に顔立ちがはっきりしすぎていると作中のキャラに被ってしまって演技に集中できない。
好みの問題なので我慢するか出演作は観ないかしかできないのがもどかしいですが、今作に関しては鶴瓶師匠の再婚相手というインパクトが想像以上に発揮されていたのでよしとしましょう。

作中では登場キャラクターの掘り下げにちゃんと尺を割いていましたが、特に優子に対してフィーチャーしていました。
自分のことを“尼ロック”だと言う父の真意が分からなかった幼少期、過程よりも結果を重んじ続けてきた人生、母が変わっても3人で過ごしてきた家族の日々。
そして父を亡くして新たな家族として一緒に暮らすうち、孤独だと思っていた人生が、無くならない思い出と新たな家族と共に築いていく将来の希望で彩られていく、そんな優子の変化がよく描かれていたと思います。

作品のタイトルにしていながら、序盤以降“尼ロック”について語られないことは気になりましたが、大型台風から家族を守ってくれたことと、阪神淡路大震災の際に家族だけでなく見知らぬ人たちを一人でも多く助けようとしていた父の姿を重ねて、上手く回収していました。
側から見ると何もしていないように見えても、いざという時には大事なものを守り、川と海の水位のように異なるもの同士を繋げる存在としてドンと構える存在。
そんな次の“尼ロック”に優子もなっていくんだろうなと思えるし、優子に守られる家族たちもまた、この先どんな不幸が訪れても、乗り越えた先で楽しんで生きていくことができるんだろうなと想像が広がります。
Jun潤

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