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Renaissance: A Film by Beyoncéのmasaakiのレビュー・感想・評価

Renaissance: A Film by Beyoncé(2023年製作の映画)
5.0
2023 12 08

9月11日カナダで実際の公演を観た者です。

2018年のビヨンセの地元テキサス州ヒューストンで開催された、彼女がトリを務めたコーチェラフェスティバル(通常ビーチェラ)は、21世紀で最も優れたステージ且つコンサートフィルム(Netflixで観られるはず)だと思っているので、今回のRenaissance Filmには良くも悪くもノープレッシャーで観に行ったのですが、ビーチェラに勝るとも劣らない、たしかにあの頃の彼女の人生の先にあるものでした。ファンとしては、この映画を観ることでRenaissance World Tourは完成した気がします。

ここからは、映画の内容に触れるのでネタバレにお気をつけください。(コンサートフィルムにネタバレって概念があるのか?)

ビヨンセとは「文化」であり、「家族」であり、「産業」であることがより強調されていた。本人が劇中で”it’s more than a concert, it’s culture”と言っているように、「文化」そのものになってしまったビヨンセが、その力をどう扱うべきかを、アルバム『RENAISSANCE』と今回のツアーで示した。

それはつまり、彼女が今この瞬間にそこに立つことを可能にしてくれた人たちに称賛を送りスポットライトを当てること。Madonna「Vogue」リミックスバージョンの「BREAK MY SOUL」がその態度を最も反映している。ツアー中に亡くなったティナ・ターナーの存在はその目的をより鮮明にさせただろうし、ダイアナ・ロスを前に涙ぐむビヨンセの様子は、説得力があり感動的。

20世紀に南部で黒人ゲイ男性として生きたジョニー叔父さんへの愛をしっかり語り、その想いがRWTで「セーフプレイス」を作ることへの執着につながっているのだ。

おそらく他の公演と同じように、バンクーバー公演でも最も歓声が上がったのはブルーが登場した瞬間であった。11歳であんなに大きなステージ立つ決断をしたのはブルー本人であり、彼女の成長ドキュメンタリーでもあった。娘の決断を尊重する母、いつでも共感を示してくれる父(「お前は俺の娘なんだから、お前が不安な時はわかる。お前が何かを感じている時もわかる」と声をかけるJAY-Zには泣かせられた)の存在は大きい。

今回のツアーから、The Weekndと同じく空山基スタイルのフューチャリスティックなデザインを取り入れ始めた。これにどういった意図があるのか分析するような記事はおそらく世の中に多く出ているはずだが、私は一切目にしていないのでテキトーなことは言えないのだが、短絡的に考えればアフロフューチャリズム的なアプローチの要素は間違いなくあるだろう。また、劇中で彼女が今回は”fun and escapism”についてツアーだと語っていたので、「現実ではないどこか」の表現としての空山基なのだろう(まぁその思想こそがアフロフューチャリズムそのものなのだが)。

テイラー・スイフトと比較しようと思ったが、2人の生い立ちも信念もパフォーマンススタイルも全く異なるので、一旦寝かせておこう。

ステージ上でただファンガールになるMegan Thee Stallion、本番で致命的な音声トラブルがあったKendrick Lamarの完全版、「ビヨンセ」のコンサートフィルムなのでカットする判断もあったはずだが、彼女ならカットしないよねぇそりゃ。

結論、とにかく一旦観てみてください。歌がうますぎる姉さんって点だけでも楽しめるので。
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