はせ川

Renaissance: A Film by Beyoncéのはせ川のレビュー・感想・評価

Renaissance: A Film by Beyoncé(2023年製作の映画)
3.0
homecomings(ビーチェラ)とRenaissance(アルバム)を聞いた程度ですが鑑賞した。冒頭に映る観客達の眼差しがまるで啓示を受けるが如くの狂騒で、これがアメリカンポップスの頂点に君臨するビヨンセの受け取られ方なのかとびっくりする(あとみんなオシャレでかっこいい)。そこから続く完璧に次ぐ完璧な歌唱と踊りと演出に、ちょっと息苦しさを感じた次の瞬間には「誰も私の苦労を知らない」と舞台の内側を吐露するシーンが差し込まれる。いや絶妙だなと彼女の演出力に感嘆した。「40代が一番だ」「30代は逆境を乗り越える瞬間をやりがいに感じていたけど40代はありのままを許せるようになった」と締め括っていたけど、舞台芸術の演出とジェンダーバランスと気配り、ボールルームカルチャーへの敬意と自分のアート性の両立、繰り返される「安全な場所」と自分のありのままを受け入れる「祝祭」というコンセプトの体現、子育てとビジネスの両立、何より己の身体とメンタルヘルスケア…と自分でコントロールしている領域の多さと仕事の出来具合は(映像で見る限り)常軌を逸していて、元気を貰ってるのか、こんだけやらなきゃダメなのか?と絶望を突きつけられてるのかよく分からない気持になった。映る全ての現代的な課題問題を完璧な形で回答していくスター(及び3児の母)の矜持を垣間見たけど、スターという存在に対して本当に同じ人間なのかをちょっと自問自答する体験だった。そんな事を思うドキュメンタリー映画は初めてかもしれない。こんなの憧れちゃうし、冒頭の神を観るかのような眼差しはその結果だと思ったし、本人もそれに自覚的なのは、より常軌を逸している。
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